1997年、大阪に住んでいた頃、アルバイトの職場に上海出身のおばさんがいた。ある時、おばさんは中国語で嬉しそうに話してから電話を切ると、「良かったわ。上海の友人が少数民族だったのよ」と言ったのである。
何事かと思ったら、当時、中国では少数民族の場合、大学への入学が楽になる制度があるため、大学進学を控える子供のいる親は、自分たちの出自を調べてみたらしい。2~3世代前でも少数民族であることが明らかにされれば、その対象になったからだという。おばさんの友人は有難いことに少数民族だったそうだ。
日本では考えられない話だと思う。出自を調べて「日本人じゃなかった」と喜ぶ人が何処にいるだろう?
その友人がどういう少数民族だったのか聞き洩らしたけれど、例えば、満州族などは、かつての支配階級だったため、平均的な教育水準が、もともと漢族より高かったらしい。その満州族も対象になっていたのだとしたら、なんだかお粗末な制度である。
満州族は、支配民族が少数民族を同化させるという類型にも当てはまっていない。満州族は征服して支配した民族に同化してしまった。
それから、少数民族に関しては、「一人っ子政策」の適用も二人までに緩和されていたそうだ。当時の中国は、少数民族の問題を熱心に取りあげていたのである。
「一人っ子政策」は、共産主義と同様、科学的な計算に基づき、「人口爆発」を抑えるために始めたという。
しかし、その後、インドが産業化・都市化に伴って、自然と出生率を下げて行ったのを見れば、中国もあれほど無理をしなくても良かったような気がする。
中国は間もなく人口でインドに抜かれてしまうばかりか、極端な高齢化の危機にも直面している。「一人っ子政策」などやるべきではなかった。
例えば、中国の国家が行なってきた重大な人権侵害の一つは、この「一人っ子政策」じゃないだろうか?
以下に貼付した「福建からイズミルへ、そして東京へ。」という駄文に登場する福建省の友人は、子供を2人作ってしまったため、警察に呼ばれて強制的にパイプカットされてしまったそうである。
しかし、人権にうるさい西欧が「一人っ子政策」を非難したという話も余り聞いていない。どうやら、自分たちの都合次第で何も言わなくなるらしい。