メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

イスタンブール市長に禁固刑の判決

イスタンブールのイマムオール市長が、選挙管理委員を「バカ」と言って侮辱した罪で禁固刑の判決を受けたという。

トルコの選挙管理委員会はヤルグタイ(大審院)等の判事らによって構成されているため、法廷侮辱罪のような認識になるのかもしれないが、2年7カ月の禁固刑はどう考えても重過ぎる。

しかも、イマムオール氏が「バカ」と言った相手は選挙管理委員ではなかったとも言われている。トルコのメディアをざっと眺めてみても、このように判決の不当性を指摘する声が多く出ている。

しかし、上告して続く裁判は未だ終わっていないので、今後の経過を見極める必要があり、現時点で大騒ぎするのは政治的なショーに過ぎないと批判する人もいる。

一方、この判決自体に政治的な意向が働いていたのではないかという疑念もある。

エルドアン派の多くは、来年の大統領選挙で強力なライバルと成り得るイマムオール氏の行く手を阻むために、エルドアン政権が司法に介入したと主張している。

これとは逆に、大統領選挙の候補にイマムオール氏を擁立するための策謀という主張もある。

野党側の統一候補は、最大野党CHP(共和人民党)の党首クルチダルオール氏ではないかと見られていたが、この一件により、イマムオール氏の名が急浮上したからだ。

予てよりイマムオール氏を推していた良党(İYİ Parti)のアクシェネル党首(女性)は、判決が出るや否やイマムオール氏のもとへ駆けつけ、イマムオール氏に抱きついて喜んでいる。

イマムオール氏も不当な判決に悲しむどころか、喜色満面でアクシェネル党首を抱きかかえていた。

ところが、ドイツに滞在していたクルチダルオール氏はその場に居合わせることもできなかった。

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イマムオール氏はイスタンブール市長選挙にCHPから立候補したものの、元来のCHP党員ではない。

そのため、CHPの内部には、外様のイマムオール氏と他党のアクシェネル氏が喜んでいる姿に不快感を催す人も少なくないだろうと言われている。

これが事実であれば、判決の一件は「野党連合を内部分裂させるためにエルドアン政権側が仕掛けた」と説くことも可能であるかもしれない。

ところで、エルドアン政権とは距離を取っているものの、反野党連合、反イマムオール氏では、政権への支援を惜しまないドウ・ペリンチェク氏率いる祖国党の機関紙と言えるアイドゥンルック紙のイスメット・オズチェリック氏は、時事討論番組で「これはイマムオール氏を擁立したい米国の策謀だ」と述べていた。

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ここまで来ると何だか妄想のような気もするけれど、ドウ・ペリンチェク氏は、2019年にも、イスタンブール市長に当選したイマムオール氏を「米国の手先」と罵っていたのである。

ドウ・ペリンチェク氏の祖国党は、トルコ軍と深い関係があるとされている。

現在、トルコ軍はテロ組織壊滅のため、陸軍のシリア越境作戦を準備しているという。来年の大統領選挙で親米的な候補が勝った場合、作戦に支障を来しかねないため、トルコ軍がエルドアン大統領の再選を強く願っているのは間違いなさそうである

それを考えたら、私も様々な妄想を巡らしたくなってしまうが、この辺で止めておくことにする。