メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコのロマ人(ジプシー)差別

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このYouTube動画は、イスタンブールのロマ人が多く住む街区を紹介している。

ロマの人々はインドから流浪の旅に出て西へ移動し、15世紀頃にはヨーロッパの各地へ到達したようである。

トルコでは流しの楽団や花売りにロマ人が多いと言われているけれど、実際、流しの楽団や花売りには、アラブやアフリカ系とも異なる独特な浅黒い風貌が目立っているように感じられる。遺伝子の検証では、インドのドラヴィダ人との関連が指摘されているそうだ。

流しの楽団や花売りの他、売春や廃品回収等々に従事している人たちも多いらしい。いずれにせよ、トルコの社会でも彼らに対する差別意識はかなり広く見られるのではないかと思う。動画の表題も「イスタンブールで最も危険な街」となっている。

チャナッカレもロマ人の多い地域として知られていて、私は2015年にその街区を見に行ったことがある。

そこでは「危険」を感じたりしなかったけれど、道端に屯しながら、突然現れた東洋人をじっと見ている人たちへカメラを向けるのは、さすがに躊躇われた。

何処で読んだのか忘れてしまったが、ロマについて調べている日本の研究者は、ロマの人々が最も活き活きとしているのはトルコであると記していた。一方、最も悲惨なのはルーマニアで、深刻な差別が見られるそうだ。

しかし、ルーマニアのロマ人には白人に近い風貌をした人が多く、外見からは見分けがつかなかったりするらしい。長年にわたって、ロマの女性たちがルーマニア人の男から犯されてきたためであるという。

そうであれば、ロマ人の独特な風貌が維持されているトルコでは、そういった忌まわしい出来事もそれほど起きていなかったのかもしれない。

2005年頃だったか、ギリシャのアレクサンドロポリス市からトルコ人居住区のあるコモティニ市へバスで向かっていたところ、同乗していたロマ人と思われる人たちがトルコ語で会話していたので、驚いて何故トルコ語が話せるのか訊いてみたら、「私たちはトルコ人だから当然トルコ語を話します。貴方は何故トルコ語が話せるのですか?」と今度は彼らが驚いていた。

コモティニに着いてから、トルコ人居住区で知り合った教養のありそうなトルコ人に、バスの車中での見聞を伝えると、「ギリシャ正教会がロマ人を受け入れようとしないので、彼らはイスラム教徒になり、トルコ人として認められているのです」と説明してくれた。

トルコへ帰ってから、ルム(トルコのギリシャ人)のスザンナさんに、この話の真偽を確認してみたけれど、彼女も「それは本当だと思う。トルコ人には確かにそういう優しい面があるよね」と話していた。

トルコ人の友人も、ギリシャに旅行して、アテネの街角で花を売っていたロマ人たちがトルコ語を話していたのに驚いたそうだ。

ブルガリア出身のロマのクラリネット奏者イヴォ・パパゾフムスリムトルコ語を話すというから、こういった例は、かなり広範に見られるのかもしれない。