メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

中国によるウイグル弾圧

中国政府による「ウイグル人弾圧」の報道が過熱している。しかし、私は2017年の4月まで20年に亘ってトルコで暮らしながら、欧米のトルコに対する凄まじい歪曲報道に呆れ果てていたため、中国に対する報道もその全てを鵜呑みにすることは出来なくなっている。

たとえば「IS」に関する報道。2015年、「トルコはISから石油を輸入している」と日本でも取り沙汰されていたはずだが、あれはいったいどうなったのだろう? 実のところ、あの件に関しては、後にCIAが誤報だったとして、トルコ政府へ正式に謝罪したそうだけれど、日本ではそこまで報じられることもなく、うやむやのまま終わってしまったのではないかと思う。

また、ウイグルの問題については、トルコでも「弾圧云々」に疑念を懐く人が少なくなかった。何故なら、トルコに渡って来たウイグル人の多くは、漢族の中国人と共同でビジネスを展開して財を成して来たからだ。

そのため、「ウイグル人は信用できない。あれだけ中国の悪口を言いながら、中国の人たちと仲良く商売しているじゃないか」と詰るトルコの人もいる。

しかし、トルコへ渡って来たウイグルの人たちが、生計を立てようとして最も頼りになるのは「中国語が話せる」という技能に他ならない。それ以外のところでどういう仕事をしろと言うのだろう? 狭間で生きるというのは、こういうことであるかもしれない。

このウイグル問題に限らず、中国は欧米や日本のメディアで非難され続けているけれど、それの何処までが本当なのか私には解らない。

良く考えてみれば、中国は「天安門事件」以来、目覚ましい発展を遂げて来た。経済と科学技術の分野であれほどの成功を収めた社会が「他の思想的な面などでは全く成長していなかった」なんてことが果たして信じられるだろうか?

中国のエリートは、世界の様々な国へ留学して見聞を広めて来た。インターネットの発達はいくら規制をかけたところで、一般の人々にも相当な情報をもたらしていたはずだ。「民主主義」等々に対する意識もかなり高まっているのではないかと思う。

2002年頃だったか、イスタンブールで日本人バックパッカーが主に宿泊するペンションを経営していた友人から、「素晴らしい中国の若者が泊まっている。お前も会ってみないか」と連絡があった。教養があって礼儀正しく、がさつな日本人バックパッカーとは比べ物にならないそうだ。

その若者とは、私の片言の英語に友人の娘さんの通訳も交えて話してみたが、なるほど紳士的で人当たりも良く、相当な人物であるように思われた。なんでも、英国の大学に留学中であり夏季休暇を利用してトルコへ旅行に来たのだという。垢抜けた雰囲気だったけれど、訊くと、四川省の農村の出身らしい。

私はペンション経営の友人家族らに、「あの人はとんでもないエリートだから、日本人バックパッカーたちも比較されたら可哀そうだよ」と説明しておいた。あれから20年近く経った。彼が今、中国で何をしているのか解らないが、そろそろ頭角を現しているかもしれない。

しかし、中国が民主化するのはまだまだ難しいと思う。たとえば、中国が民主化へ舵を切ったら、欧米はそれを称賛して惜しみない援助を中国へ与えるだろうか? おそらく、称賛するだけで、あとは「待ってました!」とばかり中国をあちこちから切り裂いて行こうとするに違いない。

また、ウイグルチベットの人たちが中国から独立すると、果たして幸せになれるのか、その辺りも何とも言えないような気がする。

オスマン帝国から欧米の介入によって独立した国々の中で、現在、まともな国家と言えるのはイスラエル以外にあるのか考えてみてもらいたい。シリアやイラクなど、独立させられたり壊されたり、まるで積み木崩しで弄ばれているかのようだ。欧米の介入によって「クルディスタン」などという国が独立したとしても間違いなく同じ運命を辿ると思う。

独立したシリアから後にトルコ共和国編入されたハタイ県に住むアラブ系の人々は、今頃、「トルコに編入されていて良かった」とホッと胸を撫でおろしているだろう。

merhaba-ajansi.hatenablog.com