メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

中国の少数民族問題

中国政府のウイグル人チベット人に対する弾圧は、かなり前から取り沙汰されている。最近、その「弾圧」は激しさを増しているらしい。

しかし、中国を訪れたこともない私に、実状がどうなっているのか判断するのは難しい。

トルコの「クルド問題」等々への呆れ果てた偏向報道に長い間苛立って所為で、中国に限らず、世界各国から伝えられて来る「情報」に疑念を抱くようになってしまった。

大袈裟かもしれないが、「情報」は米国を中心とする国際秩序に都合の良いプロパガンダになってしまい、都合の悪い「情報」は遮断されてしまう。

例えば、ベネズエラのその後はいったいどうなっているのだろう? 殆ど何も伝えられていないような気がする。

一方、反米的な情報源からは、習近平主席の思想信条に誠実な人柄も伝えられているけれど、そのため、却って宗教に対しては厳しい態度で臨んでいるかもしれない。しかし、これも私にその実状が解るわけではない。

少数民族の問題に関して、私は中国の人々に、大陸的、あるいは文明的な大らかさを感じて来た。トルコと同様、エスニックに対する偏見は非常に少ないように思えた。

1997年、大阪に住んでいた頃、アルバイトの職場に上海出身のおばさんがいて、ある時、中国語で嬉しそうに話してから電話を切ると、「良かったわ。上海の友人が少数民族だったのよ」と言った。

何事かと思ったら、中国では少数民族の場合、大学への入学が楽になる制度があるため、大学進学を控える子供のいる親は、自分たちの出自を調べてみるらしい。2~3世代前でも少数民族であることが明らかにされれば、その対象になるからだという。おばさんの友人は有難いことに少数民族だったそうだ。

日本では考えられない発想だと思った。出自を調べて「日本人じゃなかった」と喜ぶ人が何処にいるだろう?

その友人がどういう少数民族だったのか聞き洩らしたけれど、例えば、満州族などは、かつての支配階級だったため、平均的な教育水準が、もともと漢族より高かったらしい。その満州族も対象になっているのだとしたら、なんだかお粗末な制度に思えてしまう。

満州族は、支配民族が少数民族を同化させるという類型にも当てはまっていない。満州族は征服して支配した民族に同化してしまった。

それから、少数民族に関しては、「一人っ子政策」の適用も二人までに緩和されていたという。結構、中国政府も少数民族の問題には熱心に取り組んでいたのである。

しかし、トルコのクルド人の殆どは、宗教的な面で明らかにマジョリティーへ属しているものの、中国のウイグル人は、その点から言っても、清朝の時代からマイノリティーだったのではないかと思う。

トルコでも、アルメニア人等の非ムスリムの国民は、オスマン帝国の時代からマイノリティーとして存在していたはずである。

そのため、欧米が長年に亘って「クルド問題」を焚きつけて来たにも拘わらず、彼ら「ムスリム同胞」の紐帯はびくともしなかったけれど、ウイグル人の問題はそれと少し異なるのではないだろうか。

トルコの報道によれば、米国は「ウイグル人の問題」を煽るため、中国でもギュレン教団を暗躍させてきたらしい。一部のウイグル人運動家とギュレン教団には密接な関係があるという。トルコ政府がウイグル問題との関わり合いを避けているのは、この辺りにも要因がありそうだ。

そもそも、トルコの「クルド問題」と同様、米国が中国へ圧力を加えているのは、少数民族を救うためでもなければ、中国の民主化のためでもないだろう。

しかも、中国は米国にとって、トルコやかつての日本とは比べ物にならない脅威となっているような気がする。

さらに、日本のような周辺国にとってはもっと大きな脅威であるかもしれない。