メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

米国が介入した不可解な選挙?

米国の大統領選挙に大規模な不正があったという「陰謀説」も下火になったようだけれど、米国が他国の選挙に介入したり、政府の転覆を図ったりした「陰謀」は、イラン・コントラ事件のように後から露見してしまった例も見られる。

トルコでは、2016年の「7月15日クーデター事件」に米国が関与していたのではないかと取り沙汰され、これは全く収まる気配を見せていない。

しかし、それ以前に、クーデターで転覆されそうになったエルドアン大統領とAKPが政権に就いた2002年の選挙は米国による「陰謀」だったと主張する声も反エルドアン派等の中から出ていた。

確かに、2002年の選挙は、僅か34%の得票率に過ぎなかったAKPが66%の議席を確保して単独で政権に就いたところが不可解と言えば不可解であるような気がする。

AKPはギュレン教団の後押しがなければ政権を取れなかったと言われているけれど、そのギュレン教団の背後に米国の存在があったのは、ほぼ間違いないだろう。

エルドアン派で元軍人のジャーナリスト、エロル・ミュテルジムレル氏によれば、トルコ軍は1970~80年代、米国の圧力により公然とギュレン教団のメンバーを軍に受け入れていたという。

そうであれば、2002年の選挙でも、軍を中心とする深層国家は、米国の圧力を受けて、ギュレン教団の後押しするAKPが政権を取れるよう取り計ったという仮説が成り立ってしまうかもしれない。

2002~2013年までのトルコ経済の活況は、ギュレン教団と米国によってもたらされたという説もある。トルコは2013年の5月にIMFの債務を完済している。

米国は2002年に親米的なAKP政権を発足させて「大中東プロジェクト」を推し進める計画だったらしい。

ところが、2003年の3月、米軍のトルコ国内通過是非を問う議会票決はAKPの内部から離反者が出て否決されてしまい、「親米AKP」には早くも疑問符がついてしまった。

これには、したたかなトルコ国家が親米的なAKP政権を容認しながら、そこへ親米とは言い難いエルドアンを忍び込ませていたという「逆陰謀説」も囁かれているけれど、もちろん様々な陰謀説と同じように、いずれも真偽のほどは定かじゃない。