いよいよ3日後に迫ったトルコの大統領選挙、「共和国の存亡をかけた戦い」であるとか「グローバルなインペリアリズムと伝統的なトルコ国家の対決」などと喧伝されているが、もう一つ、「前期AKP政権と後期AKP政権の対決」という要素もあるのではないかと思う。
野党6党連合から国会議員の候補として指名されたサッドゥラー・エルギン氏とイドゥリス・ナイム・シャーヒン氏は、いずれもギュレン教団に近い人物と言われ、政権側の激しい非難の対象となっている。
2016年7月の「クーデター事件」を企図したギュレン教団は、クルド武装勢力PKKと並び、トルコ共和国を脅かす最悪の「テロ組織」と認定されているからだ。
しかし、両氏はいずれも2011年~2013年にかけてAKP政権で大臣を務めている。エルギン氏は法務、シャーヒン氏は内務大臣だった。
司法と警察機構でギュレン教団のメンバーを昇格させたのは、この2人であるという。そして、彼らを大臣に抜擢したのは、当時のエルドアン首相に他ならない。
政権側は、6党連合の大統領候補クルチダルオール氏が「IMFの融資を受けても良い」と公言したとして、これも激しく非難しているけれど、発言をもう一度聞いてみたところ、「もっと良い条件で融資を受けることができる」と述べただけで、「IMFから」とは言っていない。私も勘違いしていた。
とはいえ、親欧米の姿勢を鮮明にしているクルチダルオール氏が、エルドアン大統領のようにIMFを敵視していないのは明らかだろう。
ところで、今はIMFを目の敵にしているエルドアン大統領だが、首相として在任中の2005年、トルコはIMFから最後の融資を受けている。
当時の経済担当相はアリ・ババジャン氏であり、ババジャン氏がAKPを離党後に立ち上げたDEVAという政党は、現在、6党連合の一角を成しているのである。
こうして見ると、2013年以前のAKPで、司法や経済という重要な分野を担っていた政治家が、今や6党連合でクルチダルオール氏を支えているように見える。
そのため、「前期エルドアン政権と後期エルドアン政権の対決」と言っても、それほど間違ってはいないだろう。
しかし、PKKとギュレン教団が、アタテュルクの定めた国是「国土の不可分の統一」を脅かす存在であるのは疑いの余地もない。それどころか、欧米がこの2つのテロ組織を公然と支援しているのも明らかである。
「前期エルドアン政権と後期エルドアン政権の対決」は、確かにトルコ共和国の存亡をかけた戦いであるかもしれない。