メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

米国を中心とする世界秩序の動揺?

トルコ大統領府の首席アドバイザーであるギュルヌル・アイベット氏は、出演したニュース専門局CNNトルコの番組で、現在、欧米は、1945年以来続いて来た世界秩序の動揺により、各々の機構に亀裂が生じて意思統一が図れない状態に陥っていると指摘していた。

例えば、米国ではトランプ大統領ペンタゴンの間に意見の不一致が明らかになっているけれど、ペンタゴンの内部にも様々な意見対立があるのではないかという。

これを聞いたら、米国が10年前のトルコと入れ替わってしまったように感じた。当時のトルコは、エルドアン首相と軍の間に齟齬が見られただけでなく、軍にもグローバル派と民族主義派の対立があると言われていたからだ。

民族主義派も左翼のドウ・ペリンチェク派と右翼のMHP派では180度違うように論じられていた。イスラム民族主義を習合させたMHPと異なり、左翼のドウ・ペリンチェク氏はイスラムに否定的と思われていたのである。

ところが、エルドアン大統領と軍が協力し合って「平和の泉作戦」を敢行した今のトルコは、軍も政府も一つにまとまっているように見える。

ドウ・ペリンチェク氏が、非常にイスラム的な放送局の番組に出演して、かつてのイスラム主義運動の指導者エルバカン師(エルドアン大統領の師でもある)との友情について得々と語っているのをYouTubeで観たら、以前は騙されていたのかと驚いた。

一方で、ドウ・ペリンチェク氏は、元来の左派民族主義的な放送局の番組にも出演して、「一帯一路」による中国との強い連帯を主張しているのである。

いずれにせよ、米国を中心とする世界秩序が動揺して先行きが見えなくなっているのは確かだろう。これから何があっても不思議ではないような気がする。

日本では、トルコの軍事行動を非難して、トルコがまるで好戦的な民族であるかの如く伝えられていたりするけれど、あれは米国の支援するクルド武装勢力を国境から遠ざけなければ国内の平和が保てなくなるため、窮余の一策として敢行した国土防衛戦と言って良いかもしれない。

そもそも、中東の人々がいつ戦争を望んだりしたのか? 全ては欧米がオスマン帝国を崩壊させて、勝手に地図を書き換えようとしたところから始まっているように思えてならない。

軍事的緊張が高まるにつれ、トルコでは国論を一つにまとめ、国威発揚を図るために陳腐な愛国主義が叫ばれたり、荒唐無稽な民族意識が語られたりもした。それを非難するトルコの知識人もいるけれど、他に何ができるだろう? 何処の国でも、それほど変わらないことをやっているはずだ。

平和な日本の私たちは、その荒唐無稽な言説を笑っていられるかもしれないが、今後、日本がいつトルコと同じ立場に置かれても不思議ではない現実を考えて見なければならないと思う。

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