メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコのEU加盟交渉

サバ―紙の若い女性コラムニスト、ヒラル・カプラン氏は、「イギリスのEU離脱」について論じた記事を、以下のように刺激的な表現で締めくくっていた。
「・・・これほどトルコ・フォビアがあるのだから、この連合体(EU)を数年の内に分裂させたいと望むならば、変わらぬ信念で加盟交渉に励むことができる。どうやら我々は、EUに入れなかったが、その分裂には貢献してしまった!」
しかし、トルコ政府は、分裂に一層貢献するためかどうか解らないが、今まで通り加盟交渉を継続させるらしい。
トルコでは、“政教分離主義”や“イスラム主義”といった思想信条の違いを越えて、多くの人たちが、「西欧並みの豊かで文明的な生活」に憧れ続けて来たのではないかと思う。だから、その象徴的な目標として掲げて来た「EU加盟」を、そう簡単に引き下げるわけには行かないのかもしれない。
「トルコのEU加盟」には、トルコからの分離独立を主張していたクルド人ばかりでなく、トルコと敵対していたシリアを始めとする中東の国々も、熱い眼差しを向けていた。
2005年の4月、シリアのアサド大統領は、以前の敵対的なイメージを払拭しようとしたのか、サバ―紙のインタビューに応じて、友好のメッセージを語りながら、次のように率直な心情を吐露している。
「(トルコのEU加盟は)シリアにとっても重要です。トルコがEUへ加盟すれば、私たちもEUの隣国になれるからです」
今から思うと、トルコとシリアにこんな蜜月の時代があったなんて、ちょっと信じられないくらいだ。
やはり、トルコに限らず、中東イスラム圏の多くの人たちも、「西欧並みの豊かで文明的な生活」に憧れているのではないだろうか? 命を懸けて、ボロ船で地中海の波濤を越え、西欧に新天地を求める人々が後を絶たないのである。
仮に、多くのイスラム教徒が、「西欧並みの豊かで文明的な生活」ではなく、「イスラム大義」とやらに命を懸けていたならば、さすがのイスラエルも対抗し切れなかったような気がする。
結局、宗教やイデオロギーの如何に拘わらず、人間の根源的な欲望は、さほど変わりがないということかもしれない。

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