メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

“クルド和平プロセス”の難しさ

私が暮らしているイエニドアンの街では、6月7日の選挙の結果に多くの人が酷く落胆していた。その後、CHP主導の“反AKP3党による連立”という構想が脆くも崩れ去ると、少しは元気を取り戻したようだけれど、暫くの間、家電修理屋さんも廃品回収屋さんも、皆、しょんぼりした様子で可哀想なくらいだった。

それまでは、何か大きな事件があると、いつも彼らが私を安心させようとして、「何も起こらないから心配するな」と声をかけてくれていたのに、今回は、私がそうやって彼らを慰めなければならなかった。

しかし、“クルド和平のプロセス”に関しては、彼らの話を聞いていると、私の方が不安になってしまう。

クルド人は信用ならない。これでターイップさんも誤りに気がついてくれるだろう」なんて言うのである。過半数割れしたのは、クルド人が裏切ってAKPに投票しなかった所為であり、これによってターイップ・エルドアン大統領もクルド人に対する考えを改めるのではないか、と期待しているらしい。

「ターイップは、アメリカを巧く手玉に取ったけれど、クルドにはまんまとやられてしまった」などとしたり顔で解説する人もいた。

彼らは、皆、エルドアン大統領を熱烈に支持しているものの、“クルド和平のプロセス”には、以前から不満を持っていたようだ。AKPの支持基盤で、こういった傾向は、どのくらいの割合を占めているのだろうか?

一方、今日(7月4日)のアクシャム紙のコラムで、ギュライ・ギョクテュルク氏は、「・・・問題は、既にクルド人の民衆が“和平プロセス”への支持を取り止めるという危機を越えて、トルコの統一を脅かす事態に発展している」と明らかにしていた。

ギョクテュルク氏によれば、北イラクカンディルにあるPKK本部の幹部たちは、2013年3月のネヴルーズ祭より和平を目指して続けられている“指導者オジャラン氏の呼びかけ”が、始めから不愉快で堪らなかったにも拘らず、クルド人の民衆が、この呼びかけを歓喜して受け入れたため、渋々、これに応じてきたらしい。

そして、昨年10月にコバニの事態が発生すると、カンディルのPKK本部は全力を挙げて、「AKPは、シリアのクルド勢力を潰すためにISを支援している」というプロパガンダに乗り出し、“和平プロセス”をサボタージュしようとしたのだという。

この為、トルコ政府はISに対して、いよいよ本格的な手段を講じる可能性があるそうだ。

これは、ギョクテュルク氏のコラム以外でも伝えられているけれど、アンカラの政府高官が明らかにしたところによれば、ターゲットはあくまでもISでありPYDではない、PYDとは話し合いで合理性を見出せるが、ISにこれは期待できない、ということらしい。

実際、指導者が何処にいるのかもはっきりしていないISと異なり、PYDのサレフ・ムスリム・モハメド代表は、度々アンカラを訪れている。

しかし、PYDはPKKに近い組織であり、彼らが“和平プロセス”の障害となる懸念も大きい。何だか、“和平プロセス”にはまだまだ幾多の難関が待ち受けているような気がする。

エルドアン大統領とAKPにしてみれば、PKKやPYDは言うに及ばず、支持基盤の民衆の中にも“和平プロセス”をこころよく思っていない人たちが多数いるのだから、この問題を扱うのは非常に難しいだろう。

さらに、NATOの強力な同盟国である“米英”も、おそらく“和平プロセス”をこころよく思っていない。それどころか、ひょっとすると、全ての障害の根源は、この辺りにあるのかもしれない。