メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

民衆をエルドアン嫌いにさせるには・・・

昨日、家賃を支払いにウムラニエまで出掛け、天気も良かったので、以前住んでいたエサット・パシャの街へも足を延ばしてみた。
顔馴染みだったクリーニング屋さんの店先を覗いたら、来客と談笑していた店主の青年が、「おお久しぶり!」と私にも椅子を勧めて来た。それで、30分ぐらい座って雑談したが、時節柄、話題はもっぱら選挙だった。
青年(35歳ぐらい)は、イスラム守旧派SP(幸福党)の支持者で、店の奥には大きな故エルバカン氏の写真が掲げてある。しかし、今回の選挙に限っては、与党AKPに投票するそうだ。「我々イスラム勢力は、エルドアン支持で結束を固めている」と語気を強めていた。
フェトフッラー・ギュレン教団については、「上層部が過ちを犯しているだけで、一般の信徒に罪はない」と論じていたが、フェトフッラー師を非難する言葉には厳しいものが感じられた。
彼は、AKPの不正疑惑を大筋で認めていたものの、「国益のためなら多少は構わない」という論調で、あまり意に介していない。“盗聴されたエルドアン首相と次男の会話”は、「捏造」と一蹴していた。
来客は、不正をもっと悪質なものと見ていて、彼と議論を繰り広げていたが、なんとなくAKP支持では同意しているように思えた。
先週会った人たちの中には、“エルドアン首相と次男の会話”を半ば事実と思っていながら、AKP支持を表明する人もいて驚かされた。「何があっても、他の政党よりはまし」という感じだった。
『さすがに、あれが事実だったら拙いだろう?』と思うけれど、そもそも音声の捏造など、それほど難しいわけじゃないかもしれない。8年前には、ビュレント・エジェビット氏の声色を模倣したフェイクに私も引っ掛かったことがある。

 野党CHPでは、クルチダルオウル党首が、党の会合で、問題の会話テープを披露したそうだが、これに対しては、CHP党内からも、「不法に盗聴されたという真偽さえはっきりしないテープを政争に持ち込んではならない」と批判の声が出ている。
昨日は、イエニドアンに戻ってきてからも、バス停近くの写真屋さんに呼び止められて、また長々と雑談した。
この写真屋さんは、50歳ぐらいだろうか? 2年ほど前に開店して以来、店先で顔が合えば、挨拶を交わしたりするだけだったが、先月、滞在許可延長用の写真を撮ってもらってから、急に親しくなった。
ちょっと話してみたら、ここへ越して来る前は、イズミルで30年近く写真屋をやっていたことが解り、イズミルの話題で盛り上がった。イズミルでスピード現像機を売っていた崔(チェ)さんのことは知らないと言うが、崔さんから機械を買って写真屋を営んでいたキムさんとは面識があったようだ。ひょっとすると、私も何処かで出会っていたかもしれない。何だか、とても嬉しくなった。
以来、その隣の家電修理屋さんも含めて、良く無駄話に花を咲かせている。家電修理屋さんの兄弟は、エルドアン首相と同じリゼ県の出身で、熱烈なエルドアン支持者、昨日も途中から割り込んで来て、また“エルドアン首相万歳”を繰り返していた。
写真屋さんも「今はエルドアン以外にいない」と同調していたが、彼は元々MHP(民族主義行動党)の支持者だったようである。修理屋さんがいなければ、私に「MHPをどう思うか?」と問い掛けながら、「今の党首に魅力がないから投票はしないが、MHPへの期待を失ったわけじゃない」なんて話したりする。
もちろん、このイエニドアンもエサット・パシャも、元来保守層が多い地域であり、他の街へ行ったら、どういう声が聞かれるのか良く解らない。彼らは、AKPが得票率を増やして勝つと主張しているが、いくらなんでも、そこまでは行かないような気がする。今度ばかりは、AKPにとってかなり厳しい選挙になるのではないだろうか? 
しかし、不正疑惑など何処吹く風といったエルドアン人気にも恐れ入る。昨年末に事件が勃発した頃、ある知人が語っていた言葉を思い出した。「トルコの民衆をエルドアン嫌いにさせる為には、相当の仕掛けがなければならない。まあ、今回も無理だろうな・・・」

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