メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

若い頃を懐かしんでいるんでしょうか?

AKP政権に対して、軍の介入を期待していた旧エリートたちは、それまでずっと“ご隠居の将棋”を指してきたようなものかもしれない。
何かと言えば、直ぐに“待った”をする、それでも形勢が不利になると、「でえーい」とばかり将棋盤をひっくり返して、始めからやり直す。
だから“ご隠居”は、いつまで経っても将棋が上手くならない。手の内を読んだり、相手が何を待っているのか真剣に考えたりする必要もなかった
“ご隠居”の相手は、将棋の指し方ばかりか、“待った”や、盤をひっくり返された場合の対応まで考えなければならなかった為、否応無しに鍛えられ、見事な達人となった。
旧エリートたちは、2007年の総選挙を前に、「CHPが勝って、政権は交替する」と自信満々だった。何を根拠にどういう票読みをしていたんだろう?
ところが、先月、そういう人たちと会って話していたら、「貴方が住んでいるイエニドアンの辺りじゃ、9割方がAKP支持でしょ?」なんて言う。いつから、そんな自信喪失になってしまったのか。
いくらなんでも9割は行かないと思う。この辺だって色んな人たちがいる。アレヴィー派やクルド人も少なくないから、適当に票が割れるはずだ。
選挙で勝つ自信の無い旧エリートたちは、最近、外国のメディアに働きかけて、AKPの悪宣伝に精を出しているらしい。これは、AKPばかりかトルコ全体のイメージダウンに繋がってしまうけれど、そんなことは一向に構わないようだ。
そもそも、外国のメディアとは話し合えるのに、何故、イエニドアンに来て、ここの住民と話し合ってみないのだろう。私に「そんな街で良く暮らせますね」なんて言ったりする。
先月か8月か、未だ暑かった頃、夕方、カドゥキョイで乗ったバスが、イエニドアンに近づき、車内が空いてきたら、降車口を挟んで対面に座っている高校生ぐらいの女子2人と、その脇に立って、彼女たちと楽しそうに話し込んでいる男子の様子が良く見えるようになった。
窓際に座っている女子は、ノースリーブの服着て、頭にはもちろん何も被っていない。もう一人は、長袖を着込んでスカーフをしっかり被っていた。
低い声で話す彼女たちの会話に、「ジャポン・・」というのが聴こえたので、かなり注意して様子を覗っていると、男子が身体を屈めて、スカーフの女子に何か囁き、それを窘めようとした彼女は、おそらく男子の頭を軽く叩こうとしたのだろう、パッと平手を振り下ろしたら、その拍子に男子が身体を起こそうとした為、彼女の平手はものの見事に男子のほっぺたへ命中してしまった。
「ピシャリ」と大きな音がして、スカーフの彼女はちょっと悲鳴をあげ、それから3人で大爆笑。私も笑ってしまった。
それで、彼女たちとも目が合ってしまったので、「君たちは高校生なのか?」と尋ねてみた。
まず、男子が礼儀正しく挨拶してから、「はい、皆同じ高校です」と答え、ノースリーブの女子は、「すみません。不愉快だったでしょうか?」と私に訊いた。
「いや、君らは若いんだから良いよ」と爺臭く許してあげたら、スカーフの女子は「あのう、若い頃を懐かしんでいるんでしょうか?」なんて言う。そして、皆でまた大笑いした。
イエニドアンは新しい街区だから、若い人口も多い。皆楽しくやっている。いったい誰が、この街の人たち、この国の行く末に不安を感じるのだろう。

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