メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

AKP政権を支持する人たち

アメリカでは、トランプ氏の勢いがなかなか止まらないらしい。そういったニュースを聞いていると、トルコの民度アメリカのそれよりよっぽど高いような気がしてくる。
私が住んでいるイエニドアンの街は、トルコの知識層からすれば、教育水準の低い住民が多い地域と見做されているようだけれど、私が身近に接している近所の人たちは、皆、結構冷静に情勢の変化を見ている。余り安っぽい扇動には引っかからないのではないかと思う。
もっとも、家電修理屋さんにしても、廃品回収屋さんにしても、自分たちで起業して経営を成り立たせて来たのだから、教育水準はともかく、もともと世の中の動きを良く見てきた人たちであるかもしれない。
アメリカでトランプ氏を支持する人々の多くは、零落した白人層であり、新興勢力の移民たちに不満を募らせているという。それならば、イエニドアンの彼らは、新興の中流層と言って良いから、アメリカのトランプ支持層とは、全く立場の異なる人たちだということになる。

Şimdi ve Burada 6. Bölüm - Mehmet Şimşek'le Wall Street'te Bir Gün

上記の“YouTube”のプログラムは、昨年の10月頃に放送されたようだ。国連総会の為にニューヨークを訪れていたシムシェク財務長官(当時)が、ウォール街を歩きながら経済情勢や自分の生い立ちなどを語っている。
進行役の女性ジャーナリストは、AKP政権寄りのメディアで活躍していて、ちょっと喝采屋的なところもあるけれど、なにしろ才色兼備だから、私はいつもそのお姿に拍手喝采してしまう。

喝采屋:政権のやることには何でも拍手喝采する人たちを「şakşakçı」と揶揄する言い方があって、私はこれを「喝采屋」と訳してみた。↓

それで、ウォール街の風景と言い、なかなか洒落たプログラムだと思って、フェースブックでシェアしたところ、左翼のトルコ人の友人が、「この人たちは金持ちの為に働いて成功したことが、まだ解らないのか?」などと書き込んでいたので悲しくなってしまった。
ウォール街を歩きながらシムシェク長官は、自分が貧しいクルド人の農家に生まれ、奨学金によってトルコで最も良い大学で学ぶことができたと語り、トルコ共和国には「機会均等」があると強調している。
その他、経済政策についても語っているが、経済格差の是正云々といったことには全く触れていない。そもそも、シムシェク長官は、2009年の就任当時から「AKP政権に反対している人たちは、イスラム化ではなく、グローバリズムに反対しているのだ」と論じていた人であり、「貧しい庶民の為に・・・」なんて雰囲気は余り感じられなかった。
そして、イエニドアンの家電修理屋さんや廃品回収屋さんも、エルドアン大統領とAKPを熱烈に支持しているけれど、「AKPは貧しい庶民の為に頑張っている」などと考えて支持しているわけじゃない。
彼らは、これからさらに事業を拡大して財を成して行こうと考えているだけで、現状、自分たちが貧乏であるとも思っていないだろう。
第一野党のCHPを支持する人たちが、AKP政権支持者のこういった感覚を認識しようともせず、相変わらず陳腐な左翼思想に捉われているのであれば、政権交代など夢のまた夢になってしまいそうだ。

*写真:右から廃品回収屋の実質経営者である長兄、末弟、次兄、従業員のおじさん。

f:id:makoton1960:20191008143833j:plain

f:id:makoton1960:20191008143901j:plain