メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

エルドアン大統領の次女が婚約

4年ぐらい前だったか、次のような趣旨の記事を読んだ。「AKP政権になって何が変わったのだろう? 以前、軍を中心とする体制は、イスラムの信仰を制限していたけれど、無信仰も認めていなかった。国民は体制の望むレベルで、イスラムを信仰しなければならなかった。変わったのは、その信仰のレベルだけじゃないのか?」
かつて、体制が強要しようとした「信仰のレベル」は、大多数の国民が望んでいたレベルよりも遥かに低く、脱イスラム的な傾向が感じられた。
とはいえ、一部の左翼的な政教分離主義者のように「無信仰」を奨励しているわけではなかった。1980年の軍事クーデターで激しく弾圧されたのは、イスラム勢力よりも左翼・共産主義者だったと言われている。イスラム勢力は、「1997年2月28日の政変」で初めて弾圧されることになり、ショックを受けたそうだ。
冒頭の記事を書いたのは、左派のジャーナリストで、「エルドアンは偉そうなこと言ってるけれど、大した変化はなかったじゃないか」という嫌味が込められていたように思う。
しかし、信仰に篤いAKP支持の雑誌編集者に訊いても、「そのジャーナリストの言う通りです。大した変化は起きていません」と答えて記事の趣旨に同意していた。
つまり、国民へ無理に「脱イスラム的な社会」を押し付けるのはやめて、社会の実態に合った政教分離へ修正したということなのかもしれない。
私は、カラキョイにあるロシア正教の教会を訪れて、熱心に祈る信徒の姿を見る度に、『ソビエトの70年とはいったい何だったのか』と思ってしまう。ロシアの社会は、帝政の時代からソビエトを経て、どのように変化したのだろう?

社会に変化をもたらすのは、産業化やそれに伴う都市化であり、イデオロギーによって無理に変えようとしても、社会はそう簡単に変わらないと説く識者もいる。
この25年間に、トルコの社会も少しずつ変わって来たけれど、これを振り返って見ると、上記の説は確かに説得力がある。

産業化が進み、トルコの人々は以前にも増して良く働くようになった。
メフメット・シムシェク前財務長官(現副首相)も、トルコの経済発展が、他の新興国のような地下資源によるものではなく、勤勉な人々によって支えられている点を指摘していた。この国はさらに発展するだろう。

それから、「女性の識字化が進むと、イデオロギーや宗教の如何に拘わらず、出生率は必ず下がる」というエマニュエル・トッドの説は、トルコでも実証されつつあるのではないかと思う。
例えば、エルドアン大統領は、「子供は3人作ろう!」と事あるごとに主張しているが、次男のビラル氏は結婚13年でお子さんは未だ2人のようである。
30歳を過ぎていた次女のスメイエ氏も、今日ようやく婚約を発表した。
スメイエ氏には、政界入りの噂が絶えないくらいで、かなりキャリア女性的な雰囲気を漂わせていて、もちろん高学歴である。
以下の“YouTube”のプログラムでは、マラソンを振興するイベントに参加したスメイエ氏の姿が紹介されている。↓


Sümeyye Erdoğan, İstanbul Maraton Fuarı'na katıldı.

なかなか美人だし、感じも悪くなさそうだ。私は「イマーム・ハティップ高校100周年」というシンポジウムで、スメイエ氏とは知らずに、1メートルぐらいの至近距離でその姿を見たことがある。

こんな紹介ばかりしていると、「お前も喝采屋だろう」と言われそうだが、エルドアン大統領とその家族は、独裁者であるとか何とか無茶苦茶な誹謗中傷にさらされているから、多少是正しても良さそうな気がする。
もっとも、野党CHP党首のクルチダルオウル氏も、独裁者云々では余りにも実態に合っていないと思ったのか、最近は「独裁者の出来損ない!」などと罵っているらしい。

 喝采屋:政権のやることには何でも拍手喝采する人たちを「şakşakçı」と揶揄する言い方があって、私はこれを「喝采屋」と訳してみた。

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