メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

政治家には「良い人」が多い?/何事にも慎重なエルドアン大統領?

40年ぐらい前の記憶で、例によってあやふやだが、ラジオの番組で松山千春氏がリスナーから寄せられた手紙を紹介していた。

手紙の内容は、「某政治家と身近に知り合ったら、意外と腰が低い好人物なので驚いた」というような話だったけれど、これに対する松山千春氏の受け答えが、とても面白かった。

「当たり前です。タレントや政治家なんて、『良い人』だということぐらいしか才能ないから・・・」

自分は、作詞作曲という素晴らしい才能に恵まれているため、「『良い人』である必要がない」と言いたかったらしい。

確かに、政治家は、様々な人間関係の上に成り立つ仕事だから、「良い人」だと思われるくらいじゃないと務まらないだろう。協調性があり、対立する様々な問題を調整する能力にも秀でているのではないかと思う。

世襲によらず、組織の中で栄達を遂げて来た人物であれば、それは当然のことであるかもしれない。利害関係を調整する必要がない組織ならともかく、利益を上げなければならない企業等の場合、協調性に欠ける傲慢な人物が昇進する例は余りないはずである。

例えば、以下のYouTube動画は、1984年に始まった暴力団山口組の分裂と抗争に取材したNHKのドキュメンタリー番組の一部である。

山口組の幹部らが記者の質問に答えている場面だが、2分半過ぎぐらいから答弁を一手に引き受けている中西という幹部は、穏やかな雰囲気で理路整然と語っていて、とても暴力団の幹部には見えない。

www.youtube.com

おそらく、暴力団であっても、大きな組織になれば、こういった調整能力のありそうな人物が出世したのだろう。

当然、遥かに複雑で危険な国家間の利害関係を調整しなければならない政治家に、粗暴な人間などいるわけがないと思う。

プーチン大統領もロシア政府の中でかなり穏健な方であると言われているけれど、それぐらいでなければKGBという巨大な国家組織で頭角を現すことなど出来なかったに違いない。

月刊レコンキスタの10月号に、トルコの祖国党と一水会の会談における祖国党党首ドウ・ペリンチェク氏の発言が、イナン・オネルさんの日本語訳で掲載されていた。

その中でペリンチェク氏は、米国に対してトルコはロシアとシリアと共に闘うべきであると主張して、「エルドアン政権はこれらの問題について躊躇してもたもたしているように見える」とエルドアン政権を批判している。

これは実に興味深い「批判」ではないかと思った。何故なら、トルコの反エルドアン派の多くは、エルドアン政権が米国に対してロシア・シリア寄りの姿勢を見せているのを激しく非難しているからだ。

エルドアン派は、アヤソフィアがモスクとして復活したことにも反対していたけれど、保守派のジャーナリストのフェフミ・コル氏は、「故オザル大統領であれば、もっと早く実現していたはずだ。エルドアン大統領は余りにも慎重だった」と多少批判的な調子で語っていた。

どうやら、エルドアン大統領は、様々に異なる方向から「もたもたしている」「慎重すぎる」などと批判されているらしい。

しかし、こうして慎重にバランスを調整してきたため、長期にわたって政権を維持できているのではないかと思う。エルドアン大統領もなかなか「良い人」であるかもしれない。

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