先日、アンカラのビルケント大学で、エルドアン大統領が講演し学生の質問に答えた場面をYouTubeで視聴した。
学生の質問は「トルコの近代史や世界の歴史において好きな指導者は誰ですか?」というものだったらしいが、司会者はこれに「貴方の精神世界を作る上で手本とした指導者」という問いを付け加えてから訊いている。
司会者には、エルドアン大統領と同様、保守的・イスラム的な傾向があったかもしれない。おそらくエルドアン大統領の答えを予期しながら、その問いを付け加えたような気がする。もちろん、エルドアン大統領の答えは「親愛なる指導者、聖預言者ムハンマド」だった。
続いて、聖オマルの名も出て来たが、その後は皆、政治的な指導者の名が連なった。預言者ムハンマドには、なんだか政治的な指導者としての側面も認められているようで興味深い。
トルコ近代史の指導者として、当然のことながらガーズィ(アタテュルク)にも言及していたものの、それはムハンマドの時代から、セルジューク朝、オスマン朝を経て現代に至るまでの過程の中で、申しわけ程度に語られた感じだった。
質問した学生は、まず始めに「アタテュルク」の名を期待して、「トルコの近代史」と断ったような気もするが、司会者はその期待を意図的に外してしまったのかもしれない。
現代の指導者について、エルドアン大統領は「会って話すこともあるのだから非常に難しい」と言いながら、まず中東地域の指導者としてカタールのシェイフ・タミームを「若くてダイナミック」と持ち上げたけれど、そこには外交的な配慮もあっただろう。
それは欧州の指導者として、親トルコ的だったドイツのシュレーダー元首相の名をまっ先に上げたところにも現れていたと思う。次に、「色々取り沙汰されているが・・・」と断って、イタリアのベルルスコーニ元首相の名を上げ、トルコとイタリアの経済的・技術的な関係の強化に尽力してくれたと述べている。
そして最後に、多分、実際に気が合うのではないかと思われる二人について語った。トランプとプーチンの両大統領である。
トランプ大統領にも、「好き嫌いはあるかもしれないが・・・」と断りを入れてから、「包み隠さず、はっきり話してくれる。私も彼と話す時は、包み隠さずはっきり言う」とお互いの信頼を明らかにしている。
プーチン大統領に対しても同様であると言い、二人で協力して地域の平和を築きたいと言葉に力を込めていた。