メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

米中の対決?

「安全靴など履いていたら、労働者みたいでみっともない」と言い放ったヒンズー・インド人の就学生、彼はインドの日系企業でエンジニアとして働いていたそうである。 

そのため、日本的な「労働の美徳」については理解があるのか、配送センターでは一生懸命汗を流して働いているが、「インド人は世界で最も良く働く」と自慢した上で、「ネパール人とは違います」なんて余計なことまで言い添えて、ネパール人就学生らを呆れさせたりしている。 

彼の「インドは世界一」という自慢話は色々あるけれど、「インドの人口はどんどん増えていて、もうすぐ中国を抜き去る」と言いながら、本人が一人っ子であるというのはなかなか微笑ましい。 

中国を貶めると日本人は喜ぶと思っているのか、他にも「アメリカの経済制裁で、中国の時代は終わり、インドの時代がやって来る」みたいな話で得意になる。 

こういった中国誹謗ネタに、喜ぶどころかうんざりしていた私は、「インドに酷いことしたのはアングロサクソンで、中国じゃないでしょ?」と言ってしまったものの、これは我々日本人も偉そうに言える立場じゃなかった。 

いきなり軍艦で押しかけて来て開国を迫ったのも、経済封鎖で締め上げて戦争へ引きずり込んだ末に原爆をぶち落としてくれたのも、アングロサクソンアメリカであって、中国ではなかった。 

その点、トルコの熱烈な愛国主義者であるドウ・ペリンチェク氏の主張は、遥かに筋が通っているのではないかと思う。断固として反米の姿勢を崩さず、中国との連帯を訴えている。 

オスマン帝国の末期以来、中東に災いをもたらして来たのはアングロサクソンであり、中東の人々が中国の覇権を望んだとしても、それは当たり前な感情ではないだろうか。中国の覇権は、東洋の私たちにとっても決して悪夢ではないかもしれない。 

長い文明の歴史の蓄積の上に、短期間で経済や科学技術において目覚ましい発展を遂げた中国が、政治や民生の分野では全く発展していないというのは、ちょっと信じ難いように思える。 

しかし、アメリカが覇権を中国に易々と受け渡してしまう現実も到底考えられない。 

「米中の対決」が核戦争に至っても、中国が勝てる可能性は全くないそうである。アメリカは日本という橋頭堡を使って中国本土へ核弾頭を打ち込めても、中国にはそういった橋頭堡がないからだと言う。せいぜい日本へ何発か打ち込めるだけらしい・・・。 

私の素人考えでもこの説は正しいような気がする。 

もちろん、日本の政府は「米中の対決」が回避されるよう双方に働きかけているだろう。来春には習近平国家主席国賓として来日する。 

安倍首相はエルドアン大統領に、米・イラン仲裁を提案したそうだが、そのエルドアン大統領はG20の帰途、中国を訪れ、「ウイグルの人々は幸せに暮らしている」と発言して、日本の右翼的な人たちを悲しませている。 

ほんの数か月前に、トルコの外務省がウイグル問題で中国を激しく非難する声明を発表したのと同様に、これも極めて政治的な発言に違いないが、日本とトルコで「米・イラン」だけでなく、「米中」の仲裁も模索しているというシナリオは考えられないだろうか? そうであれば素晴らしいという願望に過ぎないけれど・・・。