メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

正しい民族の姿?

モハメド・アリの半生を綴った「カシアス・クレイ」で著者のホセ・トレスが「年季の入ったプロボクサーはダウンしても立ち上がって如何に試合を続けるのか知っている」といったように記していた。

ジョー・フレージャーは、ボナベナ戦で2度のダウンを喫しながらも立ち上がって試合を続け、判定で勝利をものにしている。ホセ・トレスは、そこに「正しいプロボクサーの姿」を見たそうだ。

この話からは大分飛躍が過ぎるかもしれないが、韓国・朝鮮の歴史をざっと振り返っただけでも、私はそこに「正しい民族の姿」を見る思いがしてしまう。

何回やられてもその度に立ち上がり、現在の繁栄を実現させた粘り強さ、しぶとさは感嘆に値する。

これに比べたら、日本はちょっと優秀なアマチュアのボクサーといったところかもしれない。米国に一度やられただけで、かつての鋭い牙を抜かれてしまったかのように大人しくなり、従属的な立場に甘んじている。

万世一系の皇統を掲げて、その皇統が途絶えたら日本の民族性も滅びてしまうような言い方をする人もいるけれど、韓国・朝鮮の民族は王朝が廃されても諦めたり怯んだりしなかった。

それこそ中国の王朝などは、何度もその興亡を繰り返してきた。韓国・朝鮮に限らず、大陸の国々は皆「正しい民族の姿」を持っているのかもしれない。

例えば、日本の鎌倉時代に、「元寇」が成功して大和朝廷が滅び、モンゴルに征服されていたら、日本の歴史はそこで終わり、日本語や文化も無くなっていただろうか? 

そんなことある訳がないと思う。当時、既に独自の発展を遂げていた日本の文化は、そう簡単に滅びなかったはずである。もしも「神風」が吹いていなかったら、日本人は歴史的な試練を経て、もっと強い民族になっていたかもしれない。

とは言うものの、現在の日本もそれほど弱い民族じゃない。やられた経験の少ないアマチュア的なところはあっても、戦後は米国に従属的な姿勢を見せながら、したたかに繁栄を築き上げて来た。

しかし、今後はどうなるだろう? トルコでも「国際情勢の大きな変化」を予測する識者は少なくない。米国の威信が揺らぎ、今までの「常識」が通用しない時代を迎えると言うのである。

実際、中東では、米国に従属してトルコと敵対していたアラブ首長国連邦アブダビムハンマド・ビン・ザーイド首長世子がトルコを公式訪問したり、イスラエルが中国との関係を強化したり、これまでに考えられなかった様々な変化が起きている。

NATOの一員であるトルコは、僅か3年ほど前、米中の対立で米国を支持しながら「ウイグル人弾圧は人類の恥」などと中国を非難していたけれど、今や「一帯一路」に期待を寄せているかのような態度である(と言っても明らかな親中ではない)。

そもそも、この「一帯一路」は、かつてのシルクロードとほぼ重なっている。

歴史的なシルクロードの交易が復活して発展する可能性を、トルコが大きなチャンスと捉えていても不思議ではないはずだ。

こうして、世界経済の中心が東洋に移るのは、ひょっとすると、日本にとっても大きなチャンスであるかもしれない。

日本は巧くやれば、米中と渡り合って自主独立の立場を確保することもできるだろう。実際のところ、世界で中国の人たちと最も良く解り合えるのは我々日本人であるような気もする。

もちろん、韓国・朝鮮は中国の台頭を大きなチャンスと見ているに違いない。統一を成し遂げ、さらなる発展を目論んでいるのではないかと思う。

まあ、こういった仮定と現実が何処まで合ってくるのか解らないけれど、これまでの「常識」を外して色々仮定してみるだけでも、何だか興奮が高まってきそうだ。もう一度立ち上がって、新しい時代をスタートさせるのである。

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