メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

スリランカ人就学生の謝罪

配送センターでは忙しくなれば管理者の方たちも作業を手伝ってくれる。特に、私たちが働く部署のトップの方は、67歳という年齢にもかかわらず、一人で大型トラックの荷台に乗り込み、もの凄い勢いで満載の荷物を片付けてしまったりする。 

一昨年、初めてこの方と荷下ろし作業に入った時は、そのパワーに圧倒され、年齢を聞いてもっと驚いたが、若い頃はプロ野球の投手として8年に亘り一軍で活躍されていたという。もともと体の鍛え方が違うのである。 

当時であれば、球場まで行っても、そう簡単にサインはもらえなかっただろうに、今、私は毎日この方から伝票にサインを頂いて帰って来る。ましてや、共に汗まみれになって働けるのは、実に光栄なことだから、私もそのパワーに負けぬよう頑張っている。 

しかし、就学生の面々の多くは、この方が部署のトップであることさえ解っていないようだ。おそらく、かの国々では、管理者が汗にまみれて働いたりしないのだろう。『ユニフォームを着て作業しているのは、自分たちと同じ作業員である』ぐらいに思っているのかもしれない。 

「一番偉い人だから、あの人の言うことを聞かなかったらクビだよ」と私が注意しても、『この運転手、また何か言ってるな』という風に、まともに話を聞いていない連中もいる。実際、指示に逆らったり口答えしたりして、出入り禁止になった者が何人もいるのである。 

その中にスリランカ人の就学生がいた。私が所属する派遣会社で就学生の手配をしているネパール人の方は、彼が他のスリランカ人就学生らを引き連れて辞めてしまうのではないかと恐れ、「謝罪」を条件に、なんとか継続して働けるように頼み込んだ。 

それで数日後、再び彼を配送センターに連れて行き、現場に入る前、もう一度身振り手振りを交え、「こうやって謝るんですよ」と説明したけれど、190㎝以上ありそうな背丈から私を見下ろしながら、やはりまともに話は聞いていない様子だった。 

それから現場に入り、トップの方に引き合わせたところ、なんと彼は、その方の肩をポンと叩いて、「あっ、ごめんね」と言ったのである。 

とても気さくな方だから、「よし! 頑張ってくれ!」で済んでしまったけれど、立ち会っていた私は心臓が止まりそうだった。