メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ネパール人就学生らの手抜き作業

一昨年の11月、私が送迎車の運転手として、配送センターで作業もするようになった頃は、真面目に頑張るネパール人就学生がもっと多かった。

配送センターへ就学生の派遣が始まったのは、その半年ほど前で、当初は配送センターの管理者の方たちが手取り足取り作業のやり方を教えたという。

ところが、その後は、新しい就学生が入って来たら、先輩の就学生らが教えるようになった。そのため、良くない先輩に教わると、手抜き作業ばかり覚えて、管理者の方たちの指示も聞かなくなってしまうらしい。

指示を聞かないどころか、面と向かって「お前がやれ!」と管理者に逆らったネパール人就学生もいたそうだ。

 管理者の方は、「日本語が良く解っていないだけで、『貴方がして下さい』と言いたかったのだろうが、こちらの指示には従ってもらわないと困る」と言って、その就学生を辞めさせたけれど、実のところ、彼は本当に『お前がやれ!』と言いたかったのかもしれない。

就学生たちは学校で教科書通りの日本語を学んできたのである。私も、トルコ語や韓国語を教科書から学んだので、かえってぞんざいな言葉使いの方が難しかった。

『お前がやれ!』は、ユニフォームを着て作業する同等の作業員から指図されたと勘違いした就学生が、日本語を良く理解した上で使った言葉であるような気がする。

親子ほどある歳の差も、日本人は若く見られるため、さほど感じていなかったのではないか? あるネパール人就学生は、59歳の私を35歳ぐらいだと思っていたらしい。

 また、カースト制の影響が未だ残っているというネパールでは、階級もかなり意識されていると思う。就学生の多くは、高い学費を払って日本へ来られたくらいだから、少なくとも「労働者の階級」ではないはずだ。

私が話を聞いた限りでも、父親の職業は教師や役人、経営者といったところで、「作業員」や「運転手」はいなかった。そういったネパール人就学生にしてみれば、日本で「低い階級(?)」の人たちから指図されるのは余り気分の良いことではないかもしれない・・・。

 それから、管理者の指示に従わなかったり、手抜き作業が見られたりするネパール人就学生には、競合他社の配送センターでもバイト経験のある者が多い。

 この競合他社は、派遣会社を通さずに大量の就学生を雇用しており、既に就学生がいなければ業務が滞るような状態であるという。その配送センターでは、就学生のリーダーを任命して、作業の指示は彼らに任せているらしい。

 リーダーの殆どはネパール人就学生だそうである。スリランカ人やベトナム人の就学生からは、随分と不満の声を耳にしている。結局、不満を持った彼らが辞めて行くので、ネパール人就学生だけが増える悪循環に陥っているようだ。

ネパール人就学生らも、そこで仲良く手抜き作業ばかり覚えてしまう・・・。これは彼らにとっても、大きな禍と言えるのではないだろうか?