メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

「ジャパニーズ・ドリーム」

2年前の7月16日、トルコで軍事クーデターが市民らの抵抗によって阻止された事件を欧米各国や日本の報道は、まるでクーデターの成功を望んでいたかの如く冷ややかに伝えていたようである。
ところが、あの日、韓国のKBSニュースは、軍事クーデターの失敗を“民主的な国民の勝利”といったように熱狂的に報道していた。翌日以降は、欧米各国に追従したのか、反エルドアン的な論調になってしまったけれど、あの日に限っては、国民とエルドアン大統領の勝利を称えていたのである。
あれは、“軍事クーデター”を忌み嫌う韓国人ジャーナリストらの“条件反射”のようなものだったのだろうか?
韓国では、500年の長きにわたった李氏朝鮮の時代を通して文人支配が徹底していたため、武人・軍人が尊敬されることは余りなかったという。
支配階級である文人たちは、ひたすら読書・勉学に励み、武芸を始めとする“肉体的な活動”によって汗をかくことを嫌っていたそうである。そのため、真偽のほどは解らないが、代々支配階級に属していた家系の人たちは、骨格まで細くなっていたらしい。日本のお武家さんとはえらい違いじゃないかと思う。
しかし、それでは余りにも不健康だったような気がする。あくまでも“武”を卑しみ、“文”を崇めるのが「文明」であると言うのなら、そういう不健全なものが日本に伝わらなかったのは幸いだったかもしれない。
また、韓国で“軍事クーデター”が忌み嫌われた要因の一つには、下克上に対する徹底的な嫌悪もあるだろう。下克上は、韓国語で“ハグックサン”と読み、言葉の響きまで、非常に嫌らしい感じがするという。
日本では、「時は戦国、下克上の世」なんて言ったりすると、なんとなくロマンを掻き立てられるような気持ちになってしまうから、これもえらい違いじゃないだろうか?
豊臣秀吉が韓国で嫌われたのは、“侵略”の張本人であったのはもちろんのこと、下克上で成り上がった半生も嫌悪されたそうだけれど、日本では、これが太閤人気の最も大きな要因の一つになっている。
今太閤と持て囃された田中角栄元首相もそうだし、裸一貫から成り上がった立志伝中の人物には、夢を感じる人も多いだろう。“ジャパニーズ・ドリーム”と言って良いかもしれない。
韓国では、現代財閥の創業者・鄭周永氏でさえ、あまり“コーリアン・ドリーム”などと持て囃されたことはなかったように思う。なんとも寂しい限りだ。
しかし、“ジャパニーズ・ドリーム”なんて大そうなこと言っても、これに“アメリカン・ドリーム”のようなスケールは感じられない。なぜなら、“ジャパニーズ・ドリーム”を夢見ることができるのは、これまで殆ど“日本人”に限られてきたからである。
今、ネパールやベトナム等々から来た若者たちが、“就学生”という難しい立場のもとで、必死になって働き、日本の労働力不足を補ってくれている。彼らが、“ジャパニーズ・ドリーム”を夢見ることができるようになれば、日本の未来は開けるだろう。私はそう信じている。

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