(8月9日)
昨日(8月8日)、ハベルテュルク放送の時事討論番組で、左派ジャーナリストのギュルカン・ハジュル氏が論じたところによれば、クーデターに加担して拘束された後、ギュレン教団との関係を否定している将校らの陳述は、非常に疑わしいそうである。
彼らの中には、将官でありながら、佐官レベルの将校の指示に従って行動したと述べる者がいる。これは軍の命令系統と異なる“教団のヒエラルキー”が機能していた証左に他ならない、とハジュル氏は論じている。
これが事実なら、クーデターに加担した将校の大半は、ギュレン教団のメンバーであり、軍内部に巣食っていた“教団の組織”は想像以上の規模だったということになる。
番組では、各機構へ入り込んだ教団メンバーの摘発に伴う問題点も議論されていたが、ハジュル氏は、「教団系の金融機関に預金があるとか、子弟が教団系の学校に在籍していたことがあるとか、その程度の証拠で摘発を進めているのではないか? もしもそうであれば、AKP議員の殆どが摘発されていないとおかしい」と問い質している。
これに対して、AKP議員のメフメット・メティネル氏は、「まさか、そんなことはない。教団の指示に従って行動した証拠が明らかな者を摘発しているはずだ」というように反論してから、「我が党の閣僚経験者の中にも疑わしい人物がいる。今ここで誰とは言えないが、こちらも公正に取り調べなければならない」などと、かなり踏み込んだ発言に至った。
この発言にスタジオがざわつき、「それはビュレント・アルンチ(元副首相)じゃないのか?」という声が数人から上がると、メティネル氏は「いや、ヒュセイン・チェリック(元教育相)のことだよ」とあっさり誰なのか明かしてしまった。
しかし、左派のハジュル氏も、「教団の問題で最も反省すべきなのはAKP」と言いながら、「今は過去に遡ってアラを探すのではなく、明日に向かって解決を模索すべき」といったメティネル氏の提言にも理解を示し、「我々全員が反省しなければならない」と語っていた。
また、クルド人ジャーナリストのムフスィン・クズカヤ氏が、「教団を追及している政権が(イスラム的な)AKPで良かった。CHPだったら、教団はイスラム主義勢力を味方に引き入れ、政教分離主義とイスラム主義の戦いにすり替えていただろう」と指摘したところ、これにハジェル氏も含めて全員が賛意を表していたのは、なかなか印象的だった。
*ムフスィン・クズカヤ氏:
≪AKPの議員を務めたこともあるが、どちらかといえば左派じゃないかと思う。ちなみに、メフメット・メティネル氏は非常にイスラム的なクルド人≫
いずれにせよ、わずか数年前でさえ、左派アタテュルク主義者のハジュル氏と、右派イスラム主義者のメティネル氏が、あれほど前向きな姿勢で議論しているのは、ちょっと考えられなかったような気もする。
トルコは、クーデター事件に始まった混乱の中で、確かに未来へ向けて“新しき門”を開きつつあるのではないだろうか?