メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

明日に迫った地方選挙

今日のラディカル紙、オラル・チャルシュラル氏のコラムの表題は、「欧米がトルコを安定させないだろう」となっていた。
記事を読んで見ると、チャルシュラル氏の読者から来たメールに、「欧米はエルドアンを望んでいない。だから、(トルコは)安定しない。最も良いのは、エルドアンが辞めることだ」と記されていたらしい。
チャルシュラル氏は、進歩主義的なジャーナリストであり、長年に亘って、ジュムフリエト紙で書いていたそうだ。ラディカル紙も、その名の通り、革新あるいはリベラル色の強い新聞であるため、チャルシュラル氏の読者には、保守的なエルドアン首相を嫌っている人が多いかもしれない。
ところが、この数年、チャルシュラル氏のコラムには、エルドアン首相らの推し進めている“クルド和平のプロセス”や民主化の進展を高く評価する記事が多く見られるため、一部の読者は、かなり苛立っていたのではないかと思う。
左派・政教分離主義者の友人から私も、「問題はフェトフッラー・ギュレン教団じゃない。アメリカがエルドアンを辞めさせようとしているのだ」という話を聞いたことがある。友人は、以前、“親米的なエルドアン首相”を激しく非難していたので、ちょっと驚いてしまった。
チャルシュラル氏も、今日のコラムで、かつてエルドアンとその政権を「EU支持者、親米派」と糾弾して来た人たちが、現在、「西欧がエルドアンを望んでいない」という論点に依拠しているのは、パラドックスであると指摘している。
そして、チャルシュラル氏は、「政権の寿命が、EUとアメリカの選択によって定められるのは、どれほどノーマルだろうか? 長年に亘り、彼らの望まない政権は辞めさせられた。彼らの支持によって、軍事クーデターが挙行された。それで良くなったのか?」とも問い掛けていた。
トルコでは、未だに、「アメリカは、AKPによるイスラム化を警戒している」と主張する人たちがいるけれど、アメリカと最も親しいイスラム国がサウジアラビアであることを考えれば、こんなものは悪い冗談としか思えない。アメリカが、エルドアン政権を“強権的”と非難しているのも同様だろう。
私の勝手な想像だが、今回の選挙では、トルコ版の「戦後レジーム(大戦後に欧米の定めた枠組みという意味で)からの脱却」も問われているような気がする。これはもちろん反欧米を意味していない。トルコは何処かで必ず巧くバランスを取ると思う。