メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

カリフールの配送

以前は、トルコで電化製品などを購入する場合、街角の電気店であれば、冷蔵庫や洗濯機を直ぐに店の車で運んでくれたけれど、大きなショッピングセンターでは、後日、運送業者による配送となってしまうので、掃除機ぐらいのサイズなら、自分の車に積んで持って帰る客が多かったのではないかと思います。
ところが、イスティックラル通りの新しいショッピングモールは、裏通り側なら車両が入れるものの、買い物客用の駐車場などはないから、掃除機ぐらいでも配送してもらわなければ、持ち運ぶのは大変でしょう。
家電売場の係員に訊いたら、掃除機も無料で2日以内に配送するそうです。最近は、運送業者のシステムも整備されて来たのかもしれません。
トルコ人の友人たちとウスキュダルのアパートをシェアしていた2005年の暮れ、フランス資本の大規模ショッピングセンター“カリフール”のアジュバーデム店で、手頃な本棚を見つけて、日曜日に配送してもらえるのか訊いたら、快い返事だったので、購入を決め、代金も払って帰宅し、次の日曜日を心待ちにしました。
日曜日の朝は、天気も良く、友人のハムザとオカンが何処かへ出かけようと誘ってきたけれど、「今日は本棚が配送されてくるから・・」と言って断ったら、彼らはニヤニヤ笑いながら、「おい、お前は何年トルコに住んでいるんだ? 本棚なんて配送されて来ないから心配するな。さあ、一緒に出かけよう」と急かします。
「でも、カリフールはフランスの会社だよ。ちゃんと配送されると思うけどなあ」
「フランスだか何だか知らないが、働いているのはトルコ人だろ。運送屋もトルコ人だぜ。直ぐに持って来るわけないよ」
彼らは尚もしつこく誘ったけれど、私も頑固に断って、配送を待つことにしました。
しかし、午後の4時を過ぎても何の音沙汰もありません。さすがに痺れを切らして、カリフールへ問い合わせたら、日曜日なんで、担当者がなかなか見つからず、「この番号へかけてみて下さい」という指示に3回ほど従って、やっと事情が解っている人間に繋がり、運送業者の電話番号を聞き出したところ、これがまた携帯電話の番号でした。
何だか腑に落ちないものを感じながら、その番号に電話してみると、如何にも運転手らしいガラッパチなおじさんが出てきて、「えっ? 本棚? 本棚は今日積んでないなあ」なんて言います。
「はあ、それでは運送本部の電話番号を教えてくれませんか?」
「運送本部? そんなものないよ」
「他の運転手さんに連絡は付かないのですか?」
「他の運転手? アジュバーデム店の家具は俺一人で運んでいるんだよ」
カリフールには、皆、車で買い物に来るから、配送を頼む客は余りいないでしょう。でも、まさか一人で配送を請け負っているとは思いませんでした。
夜、ハムザとオカンは帰ってくるなり、私の部屋を覗き、「おい、本棚は何処にあるんだ? やっぱり来なかっただろう? だから心配するなって言ったんだよ・・・」と勝ち誇ったようにはしゃいでいました。
まあ、翌日、カリフールに電話して、ガンガン文句を言ったら、さすがに次の日曜日には、朝一番で持って来たけれど、やはり運転手さんは、あの電話に出たおじさんで、“俺一人”という話に偽りはなかったようです。

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