メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ノルウェイの森

2004年だったか、ギリシャへ行くバスに同乗していた韓国人の若い女性二人から、いきなり「ハルキ、読んだことあります?」と訊かれた時は、ちょっと面食らってしまいました。

韓国では、既に“ハルキ”で通っているんでしょうか。しかし、彼女たち、旅に出てから行く先々で日本人と会う度に同じ問いを繰り返して来たものの、「読んだことがある」と答えた日本人は、私が初めてだったそうです。

この2004年の11月には、ラディカル紙に「ノルウェイの森」の書評が出ていました。

セファ・カプランという有名な詩人によるもので、カプラン氏は、60年代末の日本で、18~20歳の大学生たちが引っ切り無しに洋楽を聴き、ウイスキーを飲んでいる姿に驚き、「・・・350ページの中で一曲も日本の歌には言及していない」なんて書いたりしています。

私は“ノルウェイの森”に“日本の歌”が一曲も出て来ていないなんて全く気がついていなかったから、この観察に驚かされました。

「・・・保守的で伝統を重んじる国と言えば、真っ先に思い浮かぶ日本で、しかも1968~9年に、人々は信じられないくらい気楽に性を営んでいる」とも記されていて、これには何だか苦笑いですが、この書評は最後にトルコの作家たちを厳しく批判して終っています。

「・・・せっせと小説を書いている友人たちよ、いかんなあ。少し時間を見つけてこういう感動的な本を読んで見たらどうだろう。多分、その労力の無意味なことに気がついて一休みする機会を自分たちやこの世に与えるのではないか」。