そのため、米国も懸案となっていた戦闘機の売却を承認したと伝えられているけれど、この戦闘機の件やテロ対策など表向きの理由の他に、トルコが承認を先延ばしにしてきた要因はなかったのか?
一方、加盟承認と同じように半年ほど先延ばしにされて来た「プーチン大統領の訪土」が、いよいよ2月中にも実現するらしい。何故、このタイミングなのだろう?
ひょっとすると、ウクライナの情勢に何か大きな変化があるのかもしれない。
米国では、今年の大統領選挙でトランプ氏が返り咲く可能性が取り沙汰されているようだ。そのトランプ氏はNATOからの脱退を主張したことがある。
これでは、スウェーデンの加盟によりNATOが強化されるのか、かつてフランスのマクロン大統領が論じた「脳死」の状態に陥るのか、良く解らなくなってしまう。
ロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏によれば、現在の世界は、米国による一極化が進むのか、これに反して多極化の構造が形成されるのか、その岐路に立たされているらしい。
米国の中にも一極化を危ぶむ声があり、そういった勢力がトランプ氏を担いでいるのだという説も聞かれる。
トランプ氏には何だか勇ましいイメージがあるけれど、その主張は「覇権の縮小」といったもので、勇ましいどころか弱々しい感じさえする。
しかし、弱々しいイメージでは選挙に勝てないから、一極化を危ぶみ、「覇権の縮小」を望む勢力にとって、トランプ氏は絶好の「演技者」であるのかもかもしれない。
ところで、トルコにも、多極化への期待感を懐く人たちは少なくないだろう。
とはいえ、今の段階で米国との関係を悪化させるのは非常に危険であると論じる識者も多い。
昨年、スウェーデンの加盟問題が沸騰していた頃、「あまり突っ張るとトルコがNATOから放逐されてしまう」と懸念を表明する元軍高官もいた。
トルコは、朝鮮戦争に出兵して多大な犠牲を払いながら、やっとNATOへの加盟を実現した。
何故、そこまでしてNATOに加盟したかったのか? 何処からの脅威に対してトルコを守ろうとしたのか? その答えは、「もちろんNATOの脅威からトルコを守るため」なんていうアネクドートがあるくらいだ。
今回の加盟承認に至る過程も、様々な主張が行き交う中で、エルドアン大統領らが慎重にバランスを取ろうとした過程ではなかっただろうか?