先月、ギリシャのフェタを買い求めた神戸駅構内にあるスーパー「成城石井」で、今度はイタリアの「パルミジャーノ・レッジャーノ」を買って来た。
さすがに、チーズの王様などと言われるだけあって、とても美味い。
しかし、トルコで「カシャル」と呼ばれている種類のチーズの中にも、この「パルミジャーノ・レッジャーノ」に匹敵するチーズが有るのではないかと思った。
もっとも、全てのカシャルが、そのレベルで美味いわけではなく、特に美味いカシャルを探すのはなかなか難しかった。というより、それは「偶然、美味いカシャルに行き当たることがある」と言ったほうが良いかもしれない。
なぜかと言えば、トルコのチーズはスーパーや市場で、産地別に分けて売られているぐらいで、特にブランド化が進められていないのである。
市場で無造作に並べられているカシャルの中から、おじさんが自信有り気に「これどう?」なんて言いながら、少し切って差し出してくれたカシャルを試食してみると、それが「パルミジャーノ・レッジャーノ」に負けない絶品だったりした。
フェタと同じ白チーズのペイニルも、多少ブランドのようになっているのは、エーゲ海地方のエズィネ産のペイニルぐらいじゃないかと思う。
アダパザル産の「チェルケス・ペイニル」がイスタンブールでブランドのようになっていたけれど、実際にアダパザル県のクズルック村で食べた「チェルケズ・ペイニル」と比べたら、なんだか紛い物としか思えない風味のチーズばかりだった。
私が働いていたクズルック村の工場にも、チェルケズ人の社員がたくさんいたくらいで、あの辺りにはチェルケズ人が多数居住していた。
あれは、まさに本場の「チェルケズ・ペイニル」だったのかもしれない。
「チェルケズ・ペイニル」とは異なるが、クズルック村の自宅の隣のバッカル(雑貨食料品店)で売っていたペイニルも美味かった。脂肪分が多く、しっとりとしてクリーミーな風味は絶品と言えた。
バッカルの親爺さんは、おそらく、あれを近所の知り合いの農家から仕入れていたのではないだろうか。
ペイニルは再利用のブリキ缶で漬け汁の中に保存され、そのブリキ缶が店の片隅に置かれていた。
親爺さんの息子は工場で働いていたので、多分、彼が工場のトルコ人エンジニアに、店のペイニルを持って行ったりしたのだろう。店までペイニルを買い求めに来るエンジニアもいた。
エンジニアは、店で私と顔を合わせたら、「ここのペイニル、凄く美味いよね。誰も知らないようだな」などと言いながら笑っていた。
しかし、そうやって、皆が自分たちの秘密みたいにしてしまうから、なかなかブランド化も進まなかったのかもしれない。