メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ブッシュ大統領に投げつけられた靴

SNSに、この「ブッシュ大統領へ靴が投げつけられた場面」がシェアされていた。

2008年の12月、イラクを訪れていたブッシュ大統領がバクダッドの記者会見場で、イラク人の記者から靴を投げつけられた場面である。

当時、トルコでは、その靴の製造元がトルコの会社だったため、これも随分話題になっていた。メディアのインタビューに答えた靴会社の代表者は、小学校を卒業して靴製造の見習工から始めて起業したというクルド人で、「話題になってもそれは一過性のものだから、従来通り品質の向上に努めて行く」といったように冷静な対応を見せ、なかなか印象が良かった。

一方、私は久しぶりにこの映像を観て、ブッシュ大統領の機敏さと落ち着き払った態度に改めて感心させられた。

当時、後任のオバマ大統領が未だ民主党内の選挙戦を進めていた際に、「この男なら隣で爆弾が破裂しても驚かないだろう」と評価された話を何かで読んだけれど、多分、米国の大統領選に出るような人は、様々な過程の中でそういった「冷静さ」を試されて来るのだろう。私みたいに直ぐパニックを起こしてしまうような人が大統領になったら困るからだ。

その他の見識や能力について言えば、米国のようなシステムの出来上がった国では誰が大統領になったところで、その個人が自身の見識だけで政治を動かせる範囲は限られているような気がする。

ブッシュ大統領にしても、オバマ大統領にしても決して悪意のある人物ではないだろうから、別に「戦争を起こしたい」とか「ビン・ラディンを謀殺したい」などとは考えていなかったに違いないが、その時の流れの中でそれを押し止めることも出来なかったのではないかと思う。

トランプ大統領は、政治経験が浅かったので、自分が動かせる範囲を見極められず、分限を越えて色々やろうとしたため、システムから押さえ込まれてしまったのかもしれない。

トルコもそうだろう。オスマン帝国以来の長い歴史の中で作り上げられて来たシステムがあるから、やはりエルドアン大統領に求められているのも「何事にも動じない胆力」ぐらいなもので、後はシステムの中で進められて行くのではないだろうか? 

エルドアン大統領もその中で分限を弁え、常にバランスを保ってきたからこそ長期に亘って政権を維持できているのだと思う。

どこの国でも、大概の場合、一人一人の人間が果たせる役割など高が知れているから、大統領や首相といった地位にある人を必要以上に非難して詰りつけたり、逆に過度に期待したりしても何ら変わるところはないはずだ。

しかし、今の日本のコロナ騒ぎを見ていると、誰かが分限を越えてストップをかけないと、そのままずるずる行ってしまいそうな気がする。

日本の場合、一旦流れ始めると、どんどん流れが大きくなって、誰にも押し止めることが出来なくなった例が過去にもあるから非常に恐ろしい。

それどころか、今や日本に限らず欧米諸国もそういう状態に陥っているのかもしれない。

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