メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

「韓国・財閥総帥の素顔」

 1~2ヶ月ほど前、YouTubeで以下の動画を観た。1986年の3月にNHKで放送された「韓国・財閥総帥の素顔」というドキュメンタリー番組であり、私はリアルタイムでこの番組を観ていた。当時は、韓国への語学留学も考え始めていた頃だから、それこそ食い入るように画面を見つめ、韓国語の会話を少しでも聴き取ろうとしていたのではないかと思う。

今、改めて観ても、ソウルの街角の光景など、懐かしさで胸が一杯になる。34年前の韓国は未だ日本に比べて貧しく、様々な社会問題を抱えていたかもしれないが、人々は将来を信じてやる気に溢れていた。おそらく、当時を知る韓国の人たちも、この動画を観て懐かしさに胸がときめくのではないだろうか?

日本でも、バブルの80年代より、未だ貧しかった60年代を懐かしむ傾向が見られる。やはり、皆が将来を信じてやる気に溢れている時代だったからに違いない。

改めて観て驚いた場面もある。始まって4分を過ぎたところで、現代財閥の「社長団会議」が映し出されているけれど、そこに後の大統領イ・ミョンバク氏の姿も見られるのだ。もちろん、当時は現代の一重役に過ぎないから、何の紹介もなく画面は流れて行く。


1986년, '삼성과 현대' 두 재벌 총수의 모습, 일본 (1986)

あの頃、韓国の社会で感じられたエネルギーは凄まじく、まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」という雰囲気だった。バブルで浮かれていた日本には、『あと20年もすれば、日韓の立場は逆転してしまう』と恐れた識者も少なくなかっただろう。

私も2000年代に入ってトルコで暮らしながら、「少子化云々」といった暗いニュースが日本から伝えられる度に、『そろそろ韓国の時代が来るのではないか?』と思ったりした。

トルコで知り合った韓国人の多くはクリスチャンで、宣教活動に携わる人たちも少なくなかったが、その家庭には昔ながらの伝統も感じられ、結構子沢山なところもあった。

このため、『儒教文化の根強い韓国に少子化は無縁だろう』なんて考えていたら、とんでもない話だった。

「日本に追いつき追い越せ」と迫って来ていた韓国は、日本が失速すると、その後も追うように失速し始めてしまったらしい。「少子化」など、経済成長に伴う負の面では、既に日本を凌駕しているという。

儒教の伝統は消え果たのだろうか? 儒教に対抗していると思われていたキリスト教の世界は、かえって韓国の伝統的な家庭を維持していたのかもしれない。

そんなことを考えながら、また「韓国・財閥総帥の素顔」を観たら、懐かしいどころか呆然とした思いに捉われてしまいそうな気もする。そういえば、後に大統領となったイ・ミョンバク氏も、今や収監中の身である。いったい、どうなってしまったのか・・・。