メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

正義連(挺対協)の闘争/「正義」と「正義」が争いを起こす

現在、正義連(挺対協)の問題で苦境に立たされている尹美香氏、1964年の生まれというから、私がソウルの延世大語学堂で韓国語を学んでいた頃(1987~8年)は大学生だったはずである。

当時、韓国では未だ民主化闘争の嵐が吹き荒れていた。おそらく、尹美香氏もその中で韓国政府を相手に闘っていたに違いない。その後、1993年に金泳三大統領が誕生すると、民主化闘争は一応の目標を達成して一段落ついたようだ。尹美香氏らは激しい闘争を経験した最後の世代に属するかもしれない。

日本では、60年代の安保闘争に加わった人たちの多くも後に転向し、私が成人した1980年に世間はすっかり落ち着いていた。ところが、韓国では激しい闘争を率いていた廬武鉉氏が、その後も転向しないまま政治活動を続け、2003年には大統領に就任し、闘争は民主化というより左翼革命運動に発展しながら続いた。

しかし、廬武鉉大統領やその盟友だった現在の文在寅大統領の政府では、闘争の相手に成り得ないため、闘争の矛先が日本に向けられてしまったような気もする。尹美香氏らは、もっとはっきりした強圧的な相手がいれば、遥かにやりがいを感じられたのではないだろうか?

こうして闘争を求める人たちにとっては、和解も合意も迷惑である。つまり、金銭などではなく、あくまでも「闘争」の継続が目的で今回のような事態に至ってしまったのだろう。とはいえ、弾圧もない穏やかな「闘争」を長年続けて来たので、気が緩んで規律もかなり失われていたのではないかと思う。

反旗を翻した元慰安婦の方は、「闘争」に利用されて来たことが甚だ無念だったに違いない。最大の被害者はもちろんこの方たちである。

一方、「尹美香氏は激しい闘争を経験した最後の世代」と申し上げたが、文在寅氏の世代に比べたら、その闘争もそれほどではなかったかもしれない。文在寅氏が命懸けで闘って来た信念の人であるのは間違いないはずだ。

以下の「韓国の総選挙」という駄文では、韓国の財界が親米・反中であるかのように、また頓珍漢なことを書いてしまったけれど、文在寅大統領に「南北統一」への揺るぎない信念があるのは確かだと思う。果たして、米中対立が激しさを増す中、どういう判断を下すのだろうか? 

先日訪れた東本願寺には、「『正義』と『正義』が争いを起こすのです」という標語が掲げられていた。正義や信念はひとまず置いて、現実的な判断が下されるように祈りたい。