メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

中曽根元首相 ~ 全斗煥元大統領

中曽根元首相が亡くなり、メディアで様々なエピソードが紹介されていた。その中で、もっとも興味深く思えたのは、この韓国の政治学者のツィートだった。

「中曽根御大の凄い所は政権が終わりあの百譚寺に事実上監禁されていた全元大統領夫妻にCDと羊羹と冬の服を送ってその後も毎年軽井沢に招待した事である。」と記されている。

全斗煥元大統領は、現在、「アルツハイマーを患っている」とか「いや、公判を逃れるための仮病だ」とか色々言われているけれど、中曽根元首相の訃報にどのような反応を示されたのだろうか?

昨年、金鍾泌(JP)元首相が亡くなったため、1988年に私がソウルで韓国語を学んでいた頃、韓国政治の中枢で活躍されていた方たちの中では、全斗煥氏も数少ない存命者の一人になってしまったような気がする。

金鍾泌氏は、最晩年になって、朴槿恵前大統領を批判しながら、父である朴正煕大統領についても「弱くて疑い深い人」などと厳しい言葉を述べていたが、何だかとても残念であると感じた。

金鍾泌氏には、「1961年の軍事革命をお膳立てしたのは自分である」という強い自負があったのかもしれないけれど、歴史の上で評価されるのは、やはり革命の主体となって矢面に立った人物ではないかと思う。

朴正煕大統領は、それこそ凄まじい批判を死後も受け続けたばかりか、妻と自らの命、そして娘の運命まで、その革命事業の犠牲として捧げてしまったような印象さえある。

朴正煕大統領が暗殺された後の騒乱を自ら矢面に立って収束に導いた全斗煥氏も同様に高い評価を受けても良いのではないだろうか。しかし、韓国ではその功績が全く評価されない状況が続いている。それどころか、朴正煕氏の功績も正当には評価されていないような気がする。

朴正煕氏には、「プラグマティズムを韓国へもたらした」という評価もあるそうだが、現在の韓国は、正邪善悪に拘り、現実的な利害関係を見ようとしないイデオロギー闘争に執心しているような雰囲気である。いったいどうなってしまったのかと思う。