メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

二重国籍の是非

ギリシャとトルコの間を行ったり来たりしながら生活しているルムの人たちの多くは、当然、いずれの国籍も有しているのではないかと思う。ルムのスザンナさんと息子のディミトリー君も二重国籍者である。
トルコでは、これに対して異議を唱える声など聞いたこともない。
選挙が近づくと、イエニドアンの街の人たちは、「マコト、お前は何処に投票するんだ?」と、当たり前な顔で訊く。「日本が二重国籍を認めていないので、私はトルコの国籍を持っていません」と答えると、「へええ、日本て、とても民族主義的なんだね」なんて驚いたりする。
フランスも、1962年にアルジェリアが独立した後、アルジェリア人のフランス国籍を剥奪することなく、二重国籍を認めたそうだが、これは特に珍しい話じゃないのだろう。
珍しいのは、戦後、それまで大日本帝国の国民だった朝鮮や台湾の人たちが、国籍を剥奪されてしまった例であると思う。あれは、GHQ支配下の1947年に出された“外国人登録令”から始まったようである。
おそらく、アメリカに許されなかったはずだが、日本もフランスのように、朝鮮や台湾の人たちの二重国籍を認めていたら、ある程度は旧宗主国的な態度を維持できたかもしれない。
もっとも、そんな態度を維持して、何か利益が得られたかどうかは非常に疑問である。
現在、フランスは、ムスリムの国民に対して、非民主的な弾圧を行っているけれど、あれが出来るくらいでなければ、“宗主国”は務まらないような気もする。その代わり、自国大使館の前に、嫌がらせで銅像を並べる連中に対しては、「いい加減にしろ!」と恫喝して、撤去させるぐらいの気概は見せられる。
世間でも、偉そうな態度を取れば、風当たりが強くなるのは当たり前で、アメリカなどは世界中からごうごうたる非難を浴びている。日本はその風下に立って、少しは風当たりを避けられる。そのさらに風下に立たされた国は、風が当たらないのを良いことに、言いたい放題のやりたい放題だ。
果たして、何処に立つと最も居心地が良いのだろう? 今のところ、日本はそれなりに悪くないポジションを占めているようにも思える。いずれにせよ、全てを都合良く揃えてしまうのは無理に違いない。
しかし、日本もその内、二重国籍は認めなければならなくなるだろう。世界はそういう方向へ進んでいるような気がする。
ところで、最近、二重国籍を話題にされている蓮舫さんだが、余り詳しく存じ上げないものの、なんとなく彼女は、「普通の左翼的な日本人」であるようにしか見えない。ジュディ・オングさんぐらいの華やかな多様性を感じさせる人であればもっと良かった。