トルコに居た頃、選挙が近づくと、イエニドアンの街の人たちから「マコト、お前は何処に投票するんだ?」と当たり前な顔で訊かれた。
「日本が二重国籍を認めていないので、私はトルコの国籍を持っていません」と答えると、「へええ、日本て、とても民族主義的なんだね」なんて驚いたりしていた。
トルコで参政権を得るためには、トルコの国籍が必要になる。
日本では、永住権を持っている外国籍の人たちへ地方参政権を付与すべきかどうかが議論されているけれど、トルコにはそもそも永住権という制度がない。
その代わり、5年以上トルコに居住している外国人は、申請すれば簡単に国籍が取得できるそうだ。二重国籍も認められているので、元の国籍を放棄する必要はない。
私もトルコにいた時分に国籍取得を申請していれば簡単にもらえただろう。そのため、トルコ国籍を持っていない理由として、「日本では二重国籍が認められていない」という要因を言い添えないと、『この日本人、凄い民族主義者だな』とか思われてしまうかもしれない。
トルコの人たちにとって、「国籍」などと言うのは、「戸籍」に毛が生えたぐらいの重みだったような気もする。
だから、外国への移住も簡単に決めてしまうのではないだろうか?
先月、ノーベル賞の受賞者が発表された際、米国籍の日本人受賞者が話題になっていたけれど、2015年に化学賞を受賞したアジズ・サンジャル氏は、トルコと米国の二重国籍者だった。
お陰で、トルコの人たちは、受賞を「祖国の誇り」として素直に喜べたのではないかと思う。
もしも、今回の衆議院選挙で「二重国籍を認めよう!」と積極的に主張する候補がいたら、私も「投票の様子を見るため」なんて言わずに、もっと真摯な気持ちで一票を投じることができたかもしれない。