アブドゥルラフマン・ディリパク氏も、「イスラムに同性愛はあるのか？」というアヴシャル氏の問いに対しては、「イスラムでは、同性愛に限らず、あらゆる非合法的な性接触がハラーム（禁忌）とされている。もう一度言うが、貴方は、女性に一切触れないという男に、これを訊こうとしている。もう少しで喧嘩になってしまうよ」と答えて、苛立ちを隠そうとしていない。
ところで、このインタビューは、２００９年に行なわれているが、さらに７年前の２００２年、当時のＡＫＰ党首エルドアン氏（まだ首相になっていない）は、大学生との交流プログラムに出演して、同性愛者の権利に関する大学生の質問に対し、次のように答えていた。
「同性愛者らも、その権利と自由の枠組みの中で、法的な保障を得なければならない。また、時折、テレビで見受けられる、彼らも対象となっている扱われ方が、人道的であるとは思っていない・・・」
これは、以下の“YouTube”の映像から観ることが出来るけれど、ヘラヘラ笑いながら質問した大学生は、エルドアン氏が回答に窮するだろうとでも思っていたのかもしれない。しかし、エルドアン氏は至って平然と質問に答え、特に驚いた様子も見せていない。
Erdoğan'ın Eşcinsel Hakları Sözü
とはいえ、今日、エルドアン大統領に、同性愛者同士の結婚を認めるかどうか訊いたら、多分、「ノー」と答えるような気がする。そういった事柄には、もちろんイスラムの教義も関わって来るはずだ。さすがに、この一線は、エルドアン大統領も譲らないのではないか。
しかし、エルドアン大統領が、同性愛者に対して、それほど強い偏見を懐いているとは思えない。例えば、以下の駄文で話題にした“似非進歩主義者”などよりも、おそらく偏見は遥かに少ないだろう。
今年８月の大統領選挙の前には、有名な芸能人や識者が集まって、エルドアン首相（当時）を支持する会が開かれていたけれど、その中には、性転換して“女性”となった歌手のビュレント・エルソイ氏も姿を見せていた。
一緒に写真に収まっていたエルドアン首相とエルソイ氏は、握手も交わしていたに違いない。
エルドアン大統領は、若い頃、エルバカン氏が率いるイスラム系政党の下部組織で政治活動を始めると、ベイオール辺りの酒場を一軒一軒歩いて支持を訴えたそうである。そして、党大会で知り合ったエミネ夫人とは、熱烈な恋愛の末に結婚したらしい。
また、未だイスラム的な保守層の人たちが、男性の短パン姿も嫌がっていた時代、親の反対を押し切ってサッカーに打ち込み、選手として頭角を現したという。
現在、６０歳で、ディリパク氏よりは５歳若いけれど、あの世代の保守層の中では、例外的に、もの凄く新しい感覚の持ち主ではないかと思う。
