メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

イスラムの屠殺法/ISISに纏わる陰謀論

日本のメディアでも、羊や牛の首を切るイスラムの屠殺法が、話題にされたようだけれど、何故、それの元になっている“ユダヤ教の屠殺法”への言及は少ないのだろう?
ネットで検索してみると、各国の動物愛護団体から、「ユダヤ人の屠殺の仕方は残酷である」と槍玉に挙げられている例もあるらしいが、イスラムに関するそれに比べたら、かなり少ないような気がする。(イスラムより、人口が圧倒的に少ないのだから、当たり前かもしれないが、いろいろな力関係も絡んでいるのではないか?)
また、「イスラムは教義上“政教一致”だから・・」と盛んに論じられているが、ユダヤ教も“政教一致”のはずである。
イスラムの“豚の禁忌”は良く知られているのに、ユダヤ教の方は意外に知られていない。そもそもイスラムは、ユダヤ教のそれを踏襲して、“豚”を禁じたのではなかっただろうか?
コーランの第6章146節などを読む限り、イスラムでは、ユダヤ教の厳しいコーシェルの規制が緩められて、元々アラビアの人たちが殆ど口にしていなかった豚の禁忌だけが引き継がれたようにも思える。

ところで、トルコには、「ISISの攻勢も、イスラエルのガザ侵攻から目を逸らす目的で、米国が仕組んだのではないか?」などと言う人もいる。イラク軍が交戦もせずに、あっさり撤退して、ISISへ明け渡したモスルには、米国が資金を保管させていた機関があった為、これを押収したISISの『兵士らに配っている給与』が米ドルになったのだそうである。(これ、一応は国営アナトリア通信の記者の説だが・・・)
こういうのは“陰謀論”の域を出ないかもしれないけれど、シーア派に敵対しているはずのスンニー派のISISが、スンニー派クルド人勢力の拠点を次々に攻撃しているのは、何だか解せないような気もする。これにも、「トルコとクルドを仲違いさせる為の陰謀」という説明が成り立つらしい。
いずれにせよ、ISISの攻勢で最も難しい立場に置かれている国がトルコであるのは間違いないかもしれない。それで、「米国とイスラエルがトルコを困らせる為にやっているんだ」なんていう“陰謀論”が出てきてしまうようである。
しかし、パレスチナやシリアの人たちは、どうなのか解らないが、トルコ人の大多数は、ユダヤ人やイスラエルに恨みを持っているわけじゃない。現AKP政権にしても、イスラエルが不法に占領している地域から引き上げれば、それ以上のことは要求しないだろう。
トルコの国民と政府が望んでいるのは、中東の平和だけであり、これまで疑う必要はないと思う。中東に平和と民主主義が訪れれば、トルコはかつての“オスマン帝国の絆”を手がかりに経済活動を広げ、利益を上げることができる。もちろん、これは狙っているに違いないが、“オスマン帝国の再興”なんて、誇大妄想狂じゃあるまいし、誰がそんなことを考えるのだろう?
おそらく、こういった中東の権益を巡って、トルコと米国等の間で激しい鍔迫り合いが続いているようだ。ここで、当たり前に考えれば、米国等があまりにも多くの“分け前”を要求するのはおかしい。でも、強い軍事力や経済力を背景にして、そのおかしい状態が100年近く続いているため、トルコも何処かで譲歩するのは仕方ないと思っているのではないか。今は、その落とし処を交渉中といった状況なのかもしれない。

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