メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコの“ソフト・パワー”

20日、ISISに囚われていたトルコの外交官らが無事帰国したのは、日本でも大きく報道されたようだ。

帰国して、アンカラの空港で家族と再会する場面は、とても感動的だった。しかし、彼らがテロ組織からどうやって解放されたのかは、まだ何も明らかになっていない。

政府筋の発表によると、武力行使や身代金等の支払いはなく、国家情報局(MIT)が入念に準備した作戦により、この結果が得られたそうである。政府寄りのジャーナリストは、これを“ソフト・パワー”と呼び表していた。

あくまでも外交的な交渉によって打開したのであれば、何らかの譲歩を見せた可能性もあるが、その部分は最後まで明らかにされないかもしれない。

ISISが支配する地域の有力な部族たちから協力を得られたことが解放に繋がったという報道もある。これは、かなり説得力がありそうだ。

ISISは、地域の各部族まで完全に支配しているわけじゃないだろう。何だか余り地元に密着した組織ではないような気もする。却って、トルコの国家情報局(MIT)の方が、以前から、地元民や部族たちと密接な関係を持っていたかもしれない。彼らの親族は、おそらくトルコ国内にも存在している。そして、相互に頻繁な行き来があったのではないか。

8月の大統領選挙を前にして、政府寄りジャーナリストが、「エルドアンは、トルコだけではなく、シリアやイラクを含めて選挙しても大統領になるだろう」というように述べていた。もちろん、これにはプロパガンダ的な要素もあるから、鵜呑みにしてもしょうがないが、シリアやイラクの民衆の間でも、エルドアンの人気はかなり高いらしい。

トルコは、シリア・イラク・エジプトの全ての政府と関係を悪化させているけれど、いずれの国でも民衆とは非常に良い関係を築いているという声も聞かれる。

10年ぐらい前、シリアに旅行したトルコ人の友人は、何処へ行っても「トルコから来た」というだけで、とても歓待されたので驚いたと述懐していた。

オスマン帝国の絆は、まだ残っているのだろうか? そもそも、オスマン帝国が崩壊した後、その領域内で、自分たちの意志によって国家を建設したのは、トルコ以外になく、他の国々は、欧米の都合で体裁を整えただけのような気がする。これが、中東の全ての混乱の根本的な原因に違いない。

100年前は、シリアやイラクの人たちもオスマン帝国の同胞であり、現在の彼らの国が、その意志で作られたのでもないとすれば、彼らの中に、オスマン帝国へ憧憬を懐く人がかなりいたとしても不思議ではないだろう。

トルコは、今後もこの中東地域内で、相当な“ソフト・パワー”を発揮する余地を持っているのではないかと思う。