メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

“Zahter”とシリア人の家族

昨日、ヨーロッパ側にあるユルドゥズ工科大学まで行ったついでに、アクサライの飲食店街に寄った。
いつもこの辺に来たら、“Ehli Kebap”という店で“ベイラン・チョルバス(スープ)”を味わうことにしていたが、昨日は、その近くにあるピデ屋で“Zahter”なる物を食べてみた。
この飲食店街には、南東部のウルファやハタイから出て来たアラブ系の人たちが多く、看板やメニューにもアラビア語が併記されているため、アラブ人の観光客もたくさん訪れる。
“Zahter”は、看板の写真で見る限り、黒い蜜を塗ったピデ(ピタパン)のようだった。「甘いの?」と訊いたら、「香辛料を使ったアラブの食べ物だ」と言われた。珍しいので、この“Zahter”と普通のラフマージュン(中東風のピザ)を注文した。
食べてみると、辛いと言うほどではないが、苦味と酸味を感じた。店員のウルファ出身という青年に、何が入っているのか訊いても、「タイムや胡麻、その他の香辛料が使われています」という答えしか返って来ない。そもそも、彼は“Zahter”を未だ一度も食べたことがないと言うから呆れてしまう。ウルファの出身といっても、生まれ育ちは、イスタンブールなのかもしれない。
今日、ネットで調べてみたところ、“Zahter”とは、どうやら以下の“ザータル”であるらしい。
ザータルは、香辛料のタイムのことで、タイムや胡麻、スマックが入った調味料も“ザータル”と言うそうだ。パレスチナの食卓には欠かせないといった記述も見られる。

ピデ屋には、シリア人の家族連れも来ていて、彼らも“Zahter”を食べていた。店員とアラビア語のような言葉で会話していたから、当初より、シリアかパレスチナ辺りじゃないかと思っていたが、モダンな服装の白人で、ちょっと見ただけでは、トルコ人や西欧の人たちと全く区別がつかない。
40歳ぐらいの夫婦に3人の子供がいた。愛想の良いチャーミングな奥さんもノースリーブの軽装だった。御主人は殆ど英語を話さないため、もっぱらこの奥さんと片言の英語で意思の疎通を図ったが、どうやらトランジットでイスタンブールに寄っただけのようである。
ちょっと観光するには何処が良いか訊かれたので、「スルタンアフメット」と答えたところ、スルタンアフメットは既に観て来たのか、さらに他の場所を訊かれたから、「ガラタ塔」を勧めて置いた。
私も、トルコに18年ぐらい住んでいると一応自己紹介したら、「結婚は?」と訊かれる。「ノー、ノー」と手を振ると、奥さんは「ターキッシュ・ガールは綺麗なのにねえ」みたいなこと言ってケラケラ笑い、御主人は奥さんと子供たちを遠ざける仕草をしながら、私を指して「グッド!」と言い、これまた「ハハハハ」と笑った。
裕福そうな感じだったが、シリアでどういう立場にいる人たちなのかは解らない。そんなややこしい話は聞けなかった。しかし、好感の持てる人たちだったから、思わずシリアの平和を祈らずにはいられなかった。 

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