メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

スルタンアフメットのインド料理屋

一昨日(2016年12月12日)、スルタンアフットを歩いていて、7~8年前に一度、カレーを御馳走になったインド料理屋の前を通り過ぎたら、あの寒さの中、外のテーブルにも一組、トルコ人のお客さんたちが座っていた。
3ヶ月ほど前も、ヒルトンホテルにオープンしたインド料理屋を、メディアが大きく取り上げていたので、そろそろインド料理の人気も高まってきたのかと思って、今、ちょっと調べてみたところ、なんと、このスルタンアフメットの店が、ヒルトンホテルに支店を出していたのである。

2009年9月26日付けのイエニシャファク紙の記事によれば、スルタンアフメットの「Dubb Indian Restaurant」は、1998年に開店したものの、その頃、インド料理は未だトルコで珍しく、なかなか苦戦したらしい。それが、記事の当時には、常連客も訪れるようになっていたという。
私がカレーを御馳走になったのも、2009年ぐらいだったかもしれない。店は随分賑わっていて、トルコ人のお客さんが多かったように記憶している。
一般的に、トルコ人の味覚はとても保守的で、かつてはトルコ料理以外受け付けない人も多かったけれど、最近は海外旅行を楽しむ人が増え、味覚の多様化も一層進んでいるに違いない。中でもインドの料理は、トルコの人たちにとって、わりと親しみやすい方じゃないかと思う。
1992年、イスタンブールで、日本からトルコへ食材の買い付けに来たという人物と出会ったことがある。なんでも、日本でトルコ料理屋とインド料理屋をいくつも経営していたそうだ。
その方は、「基本的に、トルコ料理へ香辛料を加えればインド料理になるんですよ」と話していた。確かに、ケバブや豆の煮込み等々、香辛料の使い方以外は、殆ど変わらない料理も多いような気がする。
それから7年経った1999年、オスマンベイで韓国製服地のセールスに携わっていた頃、取引先の社長が、奥さんと日本へ旅行に行くというので、大阪の友人にお世話をお願いして、「トルコとインドの料理は似ている」などと伝えておいた。
そこで友人は、御夫婦を大阪のインド料理屋に案内して、「トルコ料理に似ている云々」を話題にしたという。そうしたら、奥さんは「似ていない、違う」と言い、「コンプリート!」と強調しながら、少し機嫌を損ねた様子だったらしい。
御夫婦は、私たちより一回り年配だった。その世代の教養のある西欧的なトルコ人の中には、トルコが中東の国々やインド、パキスタンなどと一緒にされるのを非常に嫌がる人が少なくなかったのである。
1998年、大阪に住んでいた頃、ジャイカのような機関に招かれ、日本の大学で研修を受けていたトルコ人エンジニアと会って話したところ、彼は、「とても感謝していますが、同じ研修生グループに、インド人やパキスタン人もいるんですよ」と言って、顔を顰めていた。
科学技術の分野で、インドやパキスタンは、トルコより遥かに先を行っているような気もするけれど、とにかく一緒にされたのが嫌だったのだろう。それこそ、食文化まで一緒にされたのでは、堪らない屈辱を感じていたかもしれない。
しかし、もう今の若い人たちの多くは、こういった感覚が何なのか解らないくらいじゃないかと思う。インド料理の虜になっている人も結構いるはずだ。
以下のヒュリエト紙の記事を書いているメフメット・ヤシン氏は、66歳になられるけれど、インドの食文化の豊かさを絶賛し、トルコ料理との近似性にも触れている。

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