メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

交通怪獣

先日、イスタンブールフリーメーソンの集会所が襲撃された事件は、日本でも大きく報道されたようですが、幸い死傷者も少なく、こちらではそれほど話題になっていません。
昨年11月の連続爆破事件の衝撃は、確かに大きかったものの、この時でさえ、私には事件の2週間後に報道された或る事実の方が恐ろしく感じられました。
ちょうどラマダン明けの休暇による帰省ラッシュがあったその週、トルコ各地で発生した交通事故による死者の数が99人に達したという事実がそれで、この数字は連続爆破事件における57名を遥かに上回っています。
日本では交通戦争なんて言われていますが、トルコではトラフィック・ジャナバル、交通怪獣であり、この怪獣によるテロ行為は未だいくらでも続きがありそうです。
特に長距離バスの事故が恐ろしい。一遍に10名~20名の犠牲者を出してしまいます。
5年ほど前、夜中に、自分でハンドルを握って、イスタンブールからイズミル(500km以上あると思います)へ向かったことがあるけれど、夜の長距離はこの時だけで懲りました。
なにしろ、国道には街灯も殆どなくて真っ暗。前を行く車があれば、そのテールランプを目印に走れますが、幹線道路であっても夜中の交通量は少なく、しばしば暗闇に目を凝らしながら速度を落とさなければなりません。

それでも、自分としては恐怖を感じるほどのスピードを出しているつもりなんですが、ときおり長距離バスが私たちの車を凄い勢いで抜き去り、慌ててその後をついて行こうとしても、ほどなく視界から消えてしまったりしたのです。
果たしてあのバスを運転している人たちは何を目印にしているのでしょう。

鍛えぬかれた特殊な視力でも持ち合わせているんでしょうか? もちろん、そんな猫みたいな目を持っているわけがありません。

事故が後を絶たないのも当然のことじゃないかと思います。
南東部のウルファというところを拠点としているバス会社に「ウルファ・ジェスル」というのがあって、その意味は「ウルファの勇気」。

これには思わず、「やめてー、お願いだから勇気だけは出さないで」と叫びたくなりました。
それで、肝っ玉の小さい私は、極めてケチであるにも拘わらず、バス代だけは渋りません。

長距離には、ヴァラン、ウルソイといった高級バス会社を利用します。バスの整備状況が良いし、勇気を出したり猫目を使ったりする怪獣運転手もいないからです。