メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

バックドロップ・クルディスタン

“バックドロップ・クルディスタン”という映画が日本で上映されたそうです。この映画は、クルド人として日本政府に難民申請したものの、難民と認められずに強制送還されてしまったカザンキランさんの一家に取材したドキュメンタリーであり、クルドの問題を客観的に様々な角度から捉えた力作と言われているので、私も早く観たいと思っています。
2004年、カザンキランさんの一家が、渋谷区の国連大学前で座り込みを続けて、話題になっていた時点で、ネットの記事を読んだりしながら、ある程度、経緯について知っていたけれど、私は当時から、『おそらく就労目的で日本へ渡った人たちが、何とか送還を免れようと画策しているのではないか』と想像していました。
実際に、クルド民族主義的な活動を行い、拘束される可能性のある人物ならば、ヨーロッパの支援機関が放って置かないだろうと思ったからです。
それでも、上記のサイトにより、カザンキランさん一家がガズィアンテプの出身であると解った時は、思わずずっこけそうでした。難民申請という手段を使うくらいだから、少なくとも、シュルナクとかハッカリ、ディヤルバクルといった民族的な緊張が感じられる地域の出身じゃないかと思っていたので、ガズィアンテップという平穏な地方では、何だか肩すかしを喰ったように感じてしまいました。
ガズィアンテップも、エスニック的にはクルドである人たちが多く、かつてはクルド人地域と言えたのだろうけれど、産業化が進んで比較的豊かな地方となった今、そういった印象は殆ど得られないのではないでしょうか。同化されてしまったと言われれば、確かに、そうかもしれませんが・・・。
先月、トルコ人の友人に、この映画について話したら、「なに? ガズィアンテプ出身のクルド人で難民申請? そりゃ大嘘だろう」と一旦は呆れたものの、カザンキランさんが、10年以上、日本で生活していた経緯などを説明すると、「それは可哀想だ。それまで日本の社会は、不法滞在と知りつつ彼らを労働力として使っていたんだろ。それで充分に使い切ったら追放か? ひどいねえ、日本人は。彼らが難民申請するのも無理ないよ」と日本を厳しく非難しながら、カザンキランさんに同情していました。 
ザンキランさんの一家については良く解りませんが、3年ほど前、やはり日本で在留特別許可を求めて話題になったアミネ・カリルさんというイラン人の家族には、小学校から高校まで日本の学校で学び、大学受験にも合格した長女がいて、特別許可の是非が注目されていました。
結局、その長女だけが日本への残留を許されたようですが、こういった不法滞在の家族の子供たちはどうやって学校へ行くことが出来たのでしょうか? 学校の関係者が、カリルさん家族の不法滞在を知らなかったとは思えません。それ以前に、カリルさんを雇用していた会社の関係者も、不法滞在を承知していたはずです。
これでは、トルコ人の友人に、「・・・日本の社会は、不法滞在と知りつつ彼らを労働力として使っていた」と非難されても仕方がないでしょう。カリルさん一家の話も聞いた友人は、「子供が学校へ行くのは黙認し、後になって、不法滞在だからと退去を求めるのは酷すぎる。そんな残酷な仕打ちをするくらいなら、子供が学校へ行く前に退去を命じるべきだ」と憤慨していました。