トルコの大統領選挙、野党6党連合の候補クルチダルオール氏は、大きく的を外した選挙前のアンケート調査を信じていたのだろうか?
なんとか決選投票に持ち込んだものの、エルドアン大統領にかなりの差をつけられたことが心外だったのか、温厚なクルチダルオール氏には珍しい興奮した様子も見られた。
決選投票で戦う決意を示した動画では、「私はここにいる!」と叫びながら机を激しく叩いたりしていたのである。
しかし、昨日、勝利党の党首ユミット・オズダー氏が決選投票でクルチダルオール氏への支持を明らかにすると、共に演壇に立っていつも通りの温厚な笑顔を見せている。
オズダー氏の支持により、トルコ民族主義者らの票を得られると安堵したのかもしれないけれど、このためにクルド民族主義者らの票が逃げることは懸念していないのだろうか?
なんだか、とにかく票を掻き集めようと方々へ手あたり次第に約束手形を乱発しているようにも見える。
エルドアン大統領を支持するジャーナリストのメリック・イーテル氏は出演した時事討論番組で、その様子を「途中で止まったエレベーターの中でパニックになった人」に例えていた。
「皆さん、エレベーターが途中で止まってしまったらどうしますか? まず、慌てて手あたり次第にあらゆる階のボタンを押してみるでしょう? それから、大声で叫び、最後はドアを激しく叩くんじゃありませんか? 現在のクルチダルオール氏の状態がまさにそれです」
トルコでは、停電などにより突然エレベーターが停止してしまうことも珍しくないので、他の出演者たちも、この例え話を結構面白がっていたようだ。
2010年頃だったか、電力関連の企画の調査でトルコへ来た日本の技術者を案内していたところ、技術者の方から「この辺りはよく停電するんじゃないですか?」と訊かれた。
「これだけ人口が密集しているのに、こんな容量の小さい送電線を使っていれば当然停電しますよ」と言うのである。
どうやら、かつては都市の郊外で人口も少なかったため、容量の小さい送電線でも問題なかったが、急激に進んだ都市化で人口も増大したのにインフラの整備は間に合っていない、ということのようである。
そういえば、急に人口が増えたイエニドアンの街でも停電は頻繁に発生していた。