メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

パシャという敬称

上記の駄文で、19世紀にオスマン帝国の高官として活躍したヴァルタン・パシャを「ヴァルタン将軍」と言い表してしまったけれど、ヴァルタン・パシャは文官であり、軍の高官というわけじゃなかった。

「パシャ」が「将軍」に限定されるようになったのは共和国以降のことで、オスマン帝国の時代は、軍人か文官を問わず、国家の高い位置に就いた人への敬称として「パシャ」が用いられていたという。

共和国革命は、アタテュルクを始めとする軍人が主導したため、共和国になって軍人の権威は一層高まっていたのかもしれない。共和国で最も親しまれて来た「パシャ」は、ムスタファ・ケマル・パシャ(アタテュルク)に他ならない。

日本でも戦前は、軍が国家の最高機関と言えたのではないかと思う。これは日本に限ったことじゃなかったのだろう。現在の西欧においても、軍人の権威はなかなか高いらしい。英国では、チャールズ皇太子が陸海空軍の元帥を兼ねていたりする。

「西欧の大使館等では、外交官の大使より駐在武官の方が敬意を得られる」なんて話を聞いたりもした。

これはトルコ共和国でも同様かそれ以上であり、外交官よりも軍高官の社会的な地位は遥かに高いような感じがする。パシャ(将軍)という敬称で呼ばれるのは、それこそ特別な人たちなのだろう。

エルドアン氏が未だ首相になったばかりの2004~5年頃、当時の参謀長官ヒルミ・オズコク氏を「ヒルミ・ベイ」(ベイは男性に対する一般的な敬称)と呼んだとかいう話がメディアに伝えられたけれど、新聞記者の問いにオズコク参謀長官は、「それは有り得ない。彼(エルドアン首相)は、いつも私に『パシャム(私の将軍)』と呼びかけている」と答えたそうである。

今はどうなっているだろう? エルドアン大統領がフルスィ・アカル国防相(元参謀長官)を何と呼んでいたのか、私には記憶がない。検索しても、それに関する話は見つからなかった。

*2013年9月-イスタンブールの軍事博物館

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