昨日は、「ひまわりの丘公園」の後、小野から神戸電鉄で神戸の方へ出た。元町でパキスタンのカレー料理を食べようと思ったのである。
「チーニーカリー」という店で、半年ほど前に一度食べに来た。カレーの美味しさもさることながら、付け合わせに出てくるバスマティ・ライスが絶品だった。
他所の何処よりも美味いという印象が残っていて、それを確かめたかった。元町に出る機会は多いから、昨日でなくても良かったが、一昨日、『あそこのバスマティだ!』と突然思い出したので、直ぐ実行へ移すことにした。
「思い立ったが吉日」、これはまさしくその通りかもしれない。「チーニーカリー」は店主の方がパキスタンに出かけるため、8月の間休業するというのである。昨日来ていなかったら、9月までカレーもバスマティもお預けになるところだった。
バスマティ・ライスは盛り付けるため釜の蓋を開けた瞬間に香しい匂いが漂って来るほどで、「絶品」という記憶に間違いはなかった。カレーもスパイスの香気が爽やかで、これまた「絶品」である。
店主の方に、バスマティ・ライスが絶品なのは米が違うのか炊き方が違うのか尋ねたところ、やはりバスマティ・ライスの美味しさについては良く訊かれるそうだが、「炊き方じゃないでしょうか」というお答えだった。
店主の方にしてみれば、特別な米を使っているわけじゃないのかもしれないけれど、他所と比べて米の質にも差があるように感じられた。
バスマティ米は「香り米」と呼ばれるインディカ種の一つで、私はこの「香り米」について、1991年にイズミルでお目にかかった老先生から伺った。
先生は長年イランの農村の研究に携わって来られたので、先生がお話になっていたのは、イランの名物料理「チェロウ・ケバブ」に用いられる「香り米」である。
私が実際に「香り米」を炊いた「チェロウ(ご飯)」を食べたのは、92年か93年、イスタンブールに出て来た後のことで、イラン人の友人が作って御馳走してくれたのである。
あれも実に美味い「絶品」だったが、友人は「イスタンブールでは良い米が手に入らない。イランのはもっと美味しい」と残念そうに話していた。
老先生も仰っていたけれど、イランの人たちの「チェロウ」に対する思いには並々ならぬものがあるらしい。
95年頃だったか、東京の上野の駅前で、通行人を呼び止めテレフォンカードを売りつけようとするイランの人に掴まったので、「テレフォンカードは要らないよ。チェロウはないの?」と言ってやったら、顔をくしゃくしゃにして「それを言わないでね。イランに帰りたくなります」と唸っていた。