メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

狭間で生きる/ウイグル・日本・韓国

1991年の9月頃、トルコのイズミルウイグル人の青年と知り合った。彼は中国の新疆省に生まれ、高校生ぐらいの時にトルコへ移住してきたのではないかと思う。

ウイグル人として、日本人である貴方に感謝したい」と礼を述べたので、「何故?」と訊き返したら、「貴方たちは、昔、中国人をたくさん殺してくれた」と言い放った。しかし、こんな言葉に大した意味はなかっただろう。それで日本人が喜ぶとでも思っていたのかもしれない。

その24年後、既に国籍を取得して「トルコ人」となっていた彼は、北京を訪れて「抗日勝利70周年記念祝賀パレード」の模様を撮りSNSにシェアしていた。中国関連のビジネスで生計を立てているのだから、当然、中国の人たちにも喜んでもらわなければならない。

彼に限らず、トルコへ移住してきたウイグル人の多くが、中国とトルコの交易等の事業に携わっている。中国語を解する彼らは、非常に効率良く仕事を進めることが出来るからである。

 イスタンブールで多くのウイグル人が暮らしているゼイティンブルヌという街には、漢族の人たちも集まって来ているようだ。5年ほど前、私はゼイティンブルヌで漢族の人に出会って驚いたけれど、共同で事業を展開しているのだから、同じ街区にいるのは不思議でも何でもないだろう。

トルコの人たちの中にも、「ウイグル人は中国の悪口を言いながら、中国人と仲良く仕事しているじゃないか」と多少批判的に言う人はいる。しかし、狭間で生きる難しさとは、こういうことなのかもしれない。

国家という規模で考えたら、私たちの日本も、中国と米国の狭間で結構苦労している。韓国の辛さは、これと比較にならないくらい大きい。

外交を担う人たちは、「意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」とばかりも言ってられない。巧みに渡り合わなければならないものの、節操なくやり過ぎると相手にされなくなる。私たちの狭い世間と変わらないような気もする。

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