メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

豚肉の禁忌

昨日の土曜日、グランドバザールの近くまで出かけたついでに、アクサライへ寄って、ウイグル料理屋で“ラグマン”を食べて来た。 
麺がモチモチとしていて、なかなか美味しかった。お茶が只で飲み放題なのも嬉しい。 
隣の席にいたウイグル人の男性と雑談して、これも楽しかった。彼は、17年前、22歳の時に、新疆省のウルムチからトルコへ移住して来たそうである。 
新疆省から日本へ渡ったウイグル人の友人もいると言う。数年前、その友人が、やはりウイグル人である奥さんと子供たちを連れて、トルコへ遊びに来た。 
イスタンブールを案内してあげると、子供たちはレストランでの食事をとても喜び、「日本では殆ど外で食べたことがない・・・」と明かにしたらしい。「何故?」と父親である友人に訊くと、「ムスリム用の食堂がなく、何処にでも豚肉があるから」と答えたそうだ。 
私が、「東京に、ウイグル料理屋があるかどうか知らないけれど、トルコ料理屋だったら沢山あるだろうに・・・」と言ったら、「いやあ、トルコ人は全然気にしていないから、どんなもんだか解らない。ビジネスで海外へ行く連中の殆どは、何処へ行っても、あまり気にせずに食事しているんだ。あれでは日本のトルコ料理屋も信用できないよ」と笑っていた。 
確かに、日本で、かなり敬虔な部類(トルコの標準から見て)のトルコ人とも知り合いになったが、彼らの多くは、豚肉やラードが使われている可能性の高い料理を食べないだけで、普通のお蕎麦屋さんに入って、適当なものを注文して食べたりしていた。全ての食材がハラールであるムスリム用の食堂などは特に望んでいなかったような気もする。無いからしょうがないと思っていただけなのかもしれないけれど・・・。 
東南アジアの何処の国だったか、華僑がムスリムと結婚するため、イスラムに改宗した場合、豚で穢れた胃や腸も洗浄しなければならず、これを専門に行う業者も存在している、という記事を読んだ覚えがある。 
トルコでそういう話は今まで聞いたことがない。多くのトルコ人が、常識的に考えて、これを「ナンセンス」と感じるのではないかと思う。 
トルコでは、信仰のある人たちを対象にアンケートしても、ムスリムが行うべきイスラムの徳目として、まずは、正直、親切、勤勉といった普遍性のある道徳観念を上げる人が少なくないだろう。いくら、豚肉の禁忌を厳格に守り、断食を確実に実践したとしても、以上の道徳が欠けた人は、真っ当なムスリムと認められていないはずだ。  

f:id:makoton1960:20190530094834j:plain