メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ビナリ・ユルドゥルム新首相

一時帰国中は、常時インターネットへ接続することもかなわず、トルコのニュースはおろか、日本のニュースさえ知らずに暮れる日が少なくなかった。しかし、この間、幸いトルコでは、大規模なテロといった暗いニュースが殆どなかったようである。

おそらく、最も大きなニュースは、ダヴトオウル首相の辞任による内閣の交代ではなかったかと思うけれど、これもAKP政権支持派の間では、ある程度想定済みだったようで、それほどの衝撃もなかったらしい。支持派の中には、2014年8月の就任当初より、ダヴトオウル氏を暫定的な繋ぎ役と見做す人もいたのである。

新首相のビナリ・ユルドゥルム氏は、AKP党内に影響力があり、官僚機構にもネットワークを持つ実力者と言われているものの、その為に却って、党を自ら支配しようとしたエルドアン大統領に遠ざけられたという説も唱えられている。

それが何故、今になって登板することになったのかは諸説あって、あまり明確にはなっていないらしい。

ビナリ・ユルドゥルム新首相は、エルズィンジャン県の出身で、異端とされるアレヴィー派の家系ではないかと噂されている。エルズィンジャン県はアレヴィー派の多い地域であるし、ビナリ(Binali)は、即ちアラビア語のビン・アリ(アリの息子の意)であり、第4代正統カリフのアリを慕うアレヴィー派の人たちに多い名前だからだ。

ユルドゥルム新首相本人も、“ビナリ”がアレヴィー派の名であることを否定せず、「私の名前は、非常に誠実で善良な模範的アレヴィー派の長老だった隣人にちなんで付けられた」と語り、自分がアレヴィー派の文化から遠くなく、子供の頃からアレヴィー派の人々と共に育ったと明かしている。

アレヴィー派の問題に関しては、いつだったか、エティエン・マフチュプヤン氏が、アクシャム紙のコラムに、「アレヴィー派問題などというものはない。あるのはスンニー派の問題だ」と書いていた。

アレヴィー派が問題になっているのは、多数派であるスンニー派が彼らを受け入れようとしないからであって、アレヴィー派自身の問題ではないというのである。

だからこそ、このスンニー派の人々を説得して問題解決に導けるのは、彼らを支持基盤に持つAKPをおいて他にないとマフチュプヤン氏は論じていた。

ビナリ・ユルドゥルム新首相がこの問題の解決でも積極的な役割を担ってくれることを期待したい。