メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

アヤック・パチャ/トガニタン

先週、またバラットのイシュケンベ屋に寄って、アヤック・パチャを食べて来た。
アヤックは足、パチャは脛といった意味であり、ちょっと高級な料理屋で“アヤック・パチャ”を注文すると、“羊の骨付き脛肉の煮込み”みたいな料理が出て来るけれど、イシュケンベ屋の“アヤック・パチャ”は、韓国料理の汁物“トガニタン”と殆ど変わらないスープ料理である。
トガニタンは、牛の膝の辺りの軟骨を煮込んでいるそうだが、イシュケンベ屋の“アヤック・パチャ”はどうなんだろう? 大きさや食感も良く似ているから、やはり同じ牛膝軟骨ではないだろうか?
そもそも、イシュケンベも、辞書を見れば「反芻動物の第1胃」となっているけれど、イシュケンベ屋のスープに入っているのは、いったいどの部分なのか判然としない。
トルコでは、英語の“トライプ”と同様、第1胃~第3胃を明確に区別していないようである。韓国料理の「チョニョプ(センマイ/第4胃)」に相当する部分は、“シュルダン”と呼ばれているようだが、これは余り一般的な食材と言えそうもない。
トルコは、韓国に比べて内臓料理がそれほど発達していないのではないかと思う。
ひょっとすると、内臓に限らず、肉を扱う調理・加工全般を見ても、韓国は言うに及ばず、他のヨーロッパの国々と比べて見劣りしているかもしれない。
なにより、豚肉を使えないのが最大のマイナス要素だろう。血も禁忌とされているから、ブラッドソーセージも駄目である。
昨年、YouTubeで観た日本のドキュメンタリー番組がドイツの農村を取材していた。そこでは、豚を屠殺すると、血も内臓も一切無駄にせず、ソーセージ等に加工するそうだ。
しかし、これを見たら、かつてそのドイツの農村に存在していた貧しさも感じてしまった。ものの本によれば、産業革命が始まるまで、トルコの農村に比べて、ドイツやイギリスの農村は非常に貧しかったらしい。
昔のことは解らないが、今、トルコの農村で羊や牛を屠殺した場合、まず血は全て大地に流して棄ててしまう。内臓もかなりの部分が、犬や猫の餌になっているだろう。
東部の山間部を除いて、トルコの農村は気候も温和であり、昔から豊かな実りが約束されていたのではないだろうか? トルコの人たちの優しい温和な気質も、ここに由来しているような気がする。
その為、ドイツやイギリスに見られる刻苦勉励は、あまり身につかなかったかもしれない。
いつだったか、トルコの方と結婚されている日本人の女性から聞いたところによると、日本語に堪能な御主人は、「頑張る」「必死」「一生懸命」といった日本の言葉が大嫌いだそうである。
多分、「辛抱」「我慢」「忍耐」もトルコの人たちから憎悪されるに違いない。
でも、この15年ぐらいの間に、トルコもなかなか忙しい社会になってきた。
バイラム(宗教的な祝祭)の期間中も、大手スーパーはもちろん、多くの個人商店が休むことなく営業していたりする。特に若い世代が頑張っているのは、今後の明るい展望に繋がると思う。 

 *写真:「アヤック・パチャ」/昨年の8月、韓国で食べた「トガニタン」

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