メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

BoAが歌う“アンゲ(霧)”

先月、“YouTube”で、“BoA”が“アンゲ(霧)”という韓国の古いヒットソングを歌っているのを見つけた。
古いと言っても、1968年の曲らしいけれど、私が初めて韓国へ渡った1987年には、既に懐メロの扱いになっていて、おじさんたちがカラオケで歌う定番だった。
1986年生まれのBoAさんにしてみれば、かなり古い歌に違いない。なんでこの歌を取り上げたんだろう?
私は一時期、殆どソラでこれを歌うことができた。とても好きな韓国歌謡の一つである。しかし、BoAの持ち歌で知っているのは一曲もない。もう最近の新しい歌にはついていけなくなってしまった。
それで、“BoA”の“アンゲ(霧)”も、聴く前は、何か斬新なアレンジでも施してあるんじゃないかと嫌な予感がしたけれど、聴いてみると、それほどオリジナルからかけ離れているわけでもない。なかなか渋い歌唱だと思った。
BoA”の存在は、2003年、半年ほど日本へ帰っている時期に知った。とにかく凄い才能であると話題になっていたものの、私が解ったのはその語学力ぐらいで、歌とかダンスのほうは、何だか良く解らなかった。
その夏、韓国へ行き、同年輩の友人と話していて、“BoA”を話題にすると、「なんだそれ? 桂銀淑みたいな歌手か?」と問い返された。
『えっ、韓国じゃ“BoA”が流行っていないのか?』と驚き、CD店で“BoA”のCDを探してみたところ、これが何処にも見当たらない。ますます驚いて、店員の若い女性に訊いたら、面倒臭そうに「そこにあるでしょ」と言われた。見ると、レジの前に“BoA”のCDが、どーんと山積みになっていた。
どうやら、新しい感覚についていけない親爺どもに国境はなかったらしい。友人も私も桂銀淑さんの世代だ。
しかし、友人の「桂銀淑みたいな歌手か?」という問いには、ちょっと別の意味があったのではないだろうか? 『日本語で歌わされている“出稼ぎ歌手”』という感じだったかもしれない。
BoA”や東方神起が出て来て、大分イメージも変わってきたと信じたいが、彼らにしたって、日本では殆ど日本語で歌っているようだ。それが母国で詰られ、母国での発言が日本で批判される。これでは堪ったものじゃない。実に難しい立場に置かれてしまっている。
いつの日か、“BoA”や桂銀淑さん、キム・ヨンジャさんが、日本でも当たり前に韓国語で歌う時代が来たらと思う。


BoA - 안개(Mist)