メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコのチーズ

カシャルの由来、いずれが真実なのか良く解らない、まだ他の説もあるのだろうか? ギリシャ産やらブルガリア産やら、いろいろ食べ比べて、研究したら良いかもしれない。 
でも、私には出来ない研究だ。高血圧の為、塩分を制限しているから、実を言えば、もうこの1年ぐらい、チーズは殆ど食べていない。お陰で、8月以来、降圧剤の服用を停止しているけれど、血圧は125~135で推移している。このまま減塩を続ければ、125以下に落とせそうな気もして来た。チーズの食べ比べなんてやっている場合じゃない。
私が食べて良いのは、塩分無しの“ロル”というチーズぐらいだろう。これも“おから”みたいなタイプから、豆腐状のものまでいろいろある。蜂蜜をかけて、おやつ代わりに食べることもできる。日本では“カード”というらしい。
7~8年前、カナダ人女性がトルコ各地のチーズを調べて書いた本のトルコ語訳を少し読んだことがある。トルコには、驚くほど様々な種類のチーズがあるけれど、市場に商品として流通しているわけじゃないから、その美味しさを味わう為には、各地の農村を一つ一つ歩いて回らなければならないと記されていた。
しかし、カシャルの由来から、イタリアのカチョカヴァッロに行き着いたが、ネットでちょっと検索するだけでも、実に様々なイタリアのチーズが出てくる。その多様さにトルコはとても太刀打ちできそうもないと感じた。昔から、地方の特産品としてブランド化して来たために洗練されたばかりではなく、一層多様化も進んだのではないだろうか。
イタリアの食文化が、西ローマ帝国の流れを汲んでいるとすれば、トルコのそれは東ローマ帝国の流れじゃないかと思うけれど、特にブランド化の面では大きく差をつけられてしまったかもしれない。
こういった差は良くイスラムの所為にされているが、ビザンチンオスマンと強固な中央集権の帝国が続いたのも拙かったのではないだろうか。

韓国にいた頃、李朝時代に長く続いた中央集権の弊害を散々聞かされた。日本の江戸時代は、封建制度の下、各藩が特産品の開発などを進めたものの、朝鮮にはこれが全くなかったとか・・・。
トルコでは、現在も各県に、地方選挙で選ばれた知事と中央から任命された知事が並存しているなど、地方分権は未だに進んでいない。地方の特産品のブランド化なども、最近、やっと始まったばかりであるような気がする。

7月、ボズジャ島に行った帰り、チーズで有名なエズィネの街に寄ってきた。川の両岸に開けた、緑の多い静かな街だった。チーズ生産者組合で、エズィネのチーズ作りについて伺ったけれど、かなり長い歴史を期待していた私は、何だかがっかりしてしまった。エズィネで専門業者によるチーズの生産が始まったのは、高々80年ほど前であると言う。
それまでは、各農家がチーズを作っていただけで、このチーズを集めてイスタンブールに送っていた業者が、需要の増加を見て、自分で工房を作って生産を始めたことにより、その後、エズィネではチーズの生産が盛んになって行ったが、“エズィネのチーズ”というブランド化の動きが起こったのは、この15年ぐらいの話らしい。
エズィネには、羊や山羊の放牧が多く、新鮮な羊乳・山羊乳が手に入るため、これを天然の酵母で発酵させたチーズの風味は、他の追随を許さないそうだ。私もほんの少し食べてみたが、滑らかな舌触りでとても美味しかった。 

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