メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

野茂投手、1000日ぶりにメジャー登板

“時に感じて 花にも涙を濺ぎ、別れを恨んで 鳥にも心を驚かす”という詩は、つらい時世に何を見ても悲しくなり、何を聴いても心穏やかでいられない心境を詠んだものと教わったけれど、『それだけ何にでも感動していたってことじゃないのかなあ』と思ったりもします。

何かに感動したり、感傷的な気分に浸ることで心を紛らわしていたのではないでしょうか。

私も最近こう行き詰った生活をしていると、神経が過敏になってしまうものなのか、ちょっとしたことに落込んで感傷的な気分に浸ってしまうこともあれば、良いニュースを聞いて大いに感動して勇気付けられることもあるから、人間は何処かで巧くバランスが取れているのかもしれません。

今日は、この感動的なニュースに心から嬉しくなりました。「野茂投手、1000日ぶりにメジャー登板」。

野茂投手に会ったことはないし、別に大ファンというわけでもないけれど、以下のような思い出もあって、何だかとても親しみを感じているのです。

95年~96年にかけて長距離トラックの運転手をしていた時、一度だけ新日鉄堺へ積荷を運んだことがあります。

積荷を降ろして門の所まで戻ると、門の脇に小さな食堂を見つけたので、ちょっと腹ごしらえして行こうと思ってトラックを停め、その食堂へ寄ってみました。

食堂にはカウンター席と四人がけのテーブルが二つか三つしかなかったのではないかと記憶しています。お客さんは一人もいませんでした。

そこで、適当に四人がけテーブルの一席へ腰を下ろすと、お茶を持ってきてくれたおばさんが、嬉しそうに「あんた知っているかい?」と話し始めたのです。

「その席にはねえ、いつも野茂さんが座っていたんだよ。でも、野茂さんの足はこんなに太かったから、あんたみたいにそうやってテーブルの中へ足を入れることが出来なくて、足をこう横に出して座っていたものさ」。

おばさんは、初めての客であれば何処へ座ろうと同じようにこの話を披露していたのかもしれません。

当時、野茂投手は既にメジャー・リーグで活躍していて、新日鉄堺に在籍していたのは、その5~6年も前のことだから、いったいおばさんは、何人ぐらいの客に同じ話をして来たのでしょう? なんとなく、野茂投手の人柄が分かるような気がしました。

それから、96年に野茂投手がノーヒット・ノーランを達成した時も、私はこのニュースを東京から大阪へ向かうトラックの中で聞いています。静岡の辺りを通過しているところでした。ニュースを聞いたら何だか急に元気が出て来て、いつもは長く感じるその先の道中がとても楽に感じられたものです。